研究課題/領域番号 |
22K08077
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
神名 麻智 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (10619365)
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研究分担者 |
相方 浩 広島大学, 医系科学研究科(医), 専門研究員 (30403512) [辞退]
山本屋 武 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (50760013) [辞退]
浅野 知一郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70242063) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | NASH / Pin1 |
研究実績の概要 |
Pin1(peptidyl-prolyl cis-trans isomerase NIMA-interacting 1)は、リン酸化されたセリンもしくはスレオニンにつづくプロリンの結合を異性化することにより、標的タンパク質の構造変化を行う。Pin1のこの異性化機能は、細胞内シグナル経路の制御およびタンパク質の安定化などの重要な役割を担っている。現在までの研究において、Pin1の遺伝子発現をsiRNAによって抑制したところ、パルミチン酸刺激による脂肪滴の蓄積が抑えられたことから、NASH(non-alcoholic steatohepatitis)の症状の進行にPin1が深く関わっていることを明らかにした。また、ヒト肝生検サンプルによる解析の結果、NASH患者では肝移植ドナー(健常者)と比べて、Pin1の発現は全体的にコントロールと比べて高かったが、特に核で強く発現をしていた。さらに、Pin1と同様のParvulinに分類されるPar14の発現をNASHのヒト肝生検サンプルを用いて解析したこところ、Par14もコントロールと比べ発現量が増えていたが、Pin1とは異なる細胞内局在性を表した。またPar14は肝細胞癌においてもコントロールの肝生検サンプルと比べ、非常に強く発現していた。さらにPar14のsiRNAを用いた研究からPar14がNASHにおけるPin1の核移行に何らかの形で関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pin1のNASHにおける役割は以前から広く研究されてきているが、実際のヒト肝生検でのPin1発現を見た例はほとんどない。本研究では、ヒト肝生検サンプルにおいて、NASH発症時にPin1の発現量が顕著に増加し、またその局在性が核にみられることを明らかにした。さらに同じParvulinに分類されるPar14もNASHのヒト肝生検サンプルで強く発現しており、またPar14のsiRNAを用いた研究から、Pin1の核移行においてPar14が関連している可能性があるため、本研究では、Pin1のNASHの病状進行における役割に加え、Par14の役割も明らかにできる可能性があるため、順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Pin1とPar14がNASHの病状進行に関わっている可能性が示唆され、かつPin1がNASHにおいて核に移行していることが明らかになったため、、今後はNASH進行時におけるそれらの相互作用を明らかにしていきたい。特にPin1が細胞質から具体的にどのようにして核に移行するのか、また、Par14がその核移行にどの段階で関わっているのかそのメカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では肝生検標本において種々の抗体を用いて網羅的に解析する予定であったが、Par14のPin1との関連の可能性が示唆されたため、網羅的に解析する必要性がなくなった。今後はPar14との関連性を明らかにしていく。
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