研究課題/領域番号 |
22K08087
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
チョ ハクショウ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80570689)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肝線維化 / 自然免疫 / 胆汁酸 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
Gut-liver axisを標的とする新規抗肝線維化治療の基盤的検討を目指して研究を進めている.今までの研究結果では,複数のマウスモデルで肝障害中止後の肝線維化消退には,骨髄由来単球細胞におけるTLR4の経路が必要であることが確認された.それに踏まえて,今後の臨床応用を目指すため,ヒトでの同現象確認を行った.当院倫理委員会承認とインフォームドコンセントを取得のもと,抗HCV治療でHCV駆除が達成できた症例の治療前後の血清を用いて検討を行なった.血清線維化マーカーである4型コラーゲン7Sの動態がHCV患者の生命予後とメタボロームの変化を伴うことを明らかにした.また,この4型コラーゲン7Sの動態で早期線維化消退群において,遅延性消退や非消退群より,TLR4の内因性リガンドであるHMGB1およびTLR4のco-receptorである可溶性CD14の血清濃度が高値な傾向を認めた.すなわち,ヒトにおける肝線維化の消退には,TLR4を標的とした抗線維化治療の可能性が示唆された.CCl4肝線維化を起こしたGerm-freeマウスにおいてCCl4中止後に,肝線維化消退期に採取した野生型マウスの糞便移植(FMT)を行なったところ,肝線維化の消退が促進されたことを確認し,また,その糞便中にErysipelotrichaceae科の腸内細菌が有意に増加していたことを踏まえて,肝線維化消退を促進するprobioticsの役割が示唆された.胆汁酸受容体であるFXRとTLR4の相互影響につき,マウス骨髄由来ミエロイド細胞のin vitroでの検証では,TLR4の阻害によってSCOS1, SOCS3の発現低下を認めたため,TLR4-FXRのtrans-activatingの機序に関わる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上の研究結果を踏まえて,①ヒト肝線維化消退(HCV)においても,肝障害制御後にTLR4経路が機能している現象が得られたことから,線維化消退とTLR4経路の介入の臨床研究での基礎現象を確認された.②マウスFMT実験からprobioticsの可能性やFXRとTLR4の相互関係がより確認されたため,今後,マウスモデルでの単一菌種や単一胆汁酸の投与による機序の発展に繋ぐ進捗が得られたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
下記のように研究を推進したい. ①マウス肝線維化CCl4モデルにて肝線維化消退期におけるErysipelotrichaceae科のprobioticsの役割の評価:線維化消退の表現型確認のみならず,同科は抱合型一次胆汁酸から分解するbile salt hydrolaseを有することも確認しており,投与後の胆汁酸組成の変化も確認する. ②マウス肝線維化CCl4モデルにて肝線維化消退期における二次胆汁酸7-oxo-LCAのpost-bioticsの評価:マウスモデルでは門脈血中や腸管内濃度と肝線維化消退の表現型と有意な相関を認めており,また,in vitroでは骨髄由来ミエロイド系細胞へのMmp12発現誘導が確認されるため,in vivoでの検証を行う. ③肝線維化の消退は肝障害制御後のみならず,肝障害の制御が困難なNASHモデルや肝障害が増悪因子になる得るacute-on-chronic 肝不全モデルにおけるTLR4とFXRの役割をマウスモデルやヒト保存血清を用いて更に解明する.
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