研究実績の概要 |
Gut-liver axisを標的とする新規抗肝線維化治療の基盤的検討を目指して研究を進めている.今までの研究結果では,複数のマウスモデルで肝障害中止後の肝線維化消退には,骨髄由来単球細胞におけるTLR4の経路が必要であることが確認された.また、抗HCV治療でHCV駆除が達成できた症例の治療前後の血清を用いて検討を行ない、ヒト血清中4型コラーゲン7Sの動態で早期線維化消退群において,TLR4の内因性リガンドであるHMGB1およびTLR4のco-receptorである可溶性CD14の血清濃度が高値な傾向を認め、TLR4を介した線維化消退の現象をヒトで検証した。 2023年度では、さらに肝線維化からの機能回復を検討するため、ヒトのacute-on-chronic 肝不全モデルとして、重症型アルコール性肝炎(severe alcohol-associated hepatitis)患者の抗炎症治療前後のペア血清を用いて検討を行った。抗炎症治療後における、肝予備能の低下を反映するMELD-Naスコアは、血清中G-CSF, VEGF, PDGF, IL-4, IL-13, IL-22と有意な逆相関が示された。G-CSFとの逆相関は、本研究で注目していた回復性マクロファージとの関連が示唆されており、今後、臨床応用の課題になると考えられる。 マウスモデルの検証につき、Erysipelotrichaceae科の腸内細菌の機能評価を中心に進めた。肝線維化消退期に採取した野生型マウスの糞便に有意に増加するErysipelotrichaceae科の腸内細菌の遺伝子解析では、7-α hydroxysteroid dehydrogenaseを有しないことを確認した。Probioticsとしての治療応用に際し、Erysipelotrichaceae科の存在は、どのようにenterohepatic circulationを介して肝内TLR4とFXRの機能を影響するかが課題となると考えられる。
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