研究課題/領域番号 |
22K08126
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
橋本 亨 九州大学, 医学研究院, 助教 (00616617)
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研究分担者 |
絹川 真太郎 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60399871)
松島 将士 九州大学, 医学研究院, 助教 (80552869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / 炎症 / ストア作動性カルシウム流入 / TRPCチャネル / HFpEF / PDE1A |
研究実績の概要 |
C57BL/6J野生型マウスに高脂肪食とL-NAMEを投与してHFpEFモデルを作成し、5週間後にHFpEFの表現が完成していることを確認した。HFpEFマウスでは対照群と比較して、iNOSや炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6, TNFα、MCP-1)の発現亢進、小胞体ストレスに関与するPERK, CHOPの発現亢進、BiP、XBP1sの発現減少が認められた。ストア作動性カルシウム流入機構に関連する因子(STIM1, TRPC3, TRPC6)の発現増加が観察され、さらにHFpEFの心筋ではカルシウム結合蛋白であるカルモジュリンの発現増加も認められ、小胞体ストレスを契機としてストア作動性カルシウム流入機構が活性化することがHFpEFの病態促進に関わると考えられた。PDE1のうち、PDE1Aの発現がHFpEFマウスにおいて亢進していた。PDE1はカルシウム・カルモジュリンによって活性化することが知られており、上述のカルモジュリンの発現増加がPDE1の活性化につながっていると推察された。PDE1阻害により血圧や体重は変化を受けないが、HFpEFの表現型は改善した。 HFpEFにおいてはPKGの活性が低下し、PDE1阻害薬投与により回復した。一方でPKAの活性変化は明らかではなかったHFpEFにおいてPDE1Aは主としてcGMPを制御することで病態進展に寄与していることが示唆された。HFpEFマウスの心筋ではphospholambanのリン酸化が減少し、PDE1阻害で回復していたことから、PKGの活性化がこの過程に寄与しいるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに動物実験の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
阻害薬投与実験のみでは潜在的に特異性の問題があることから、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてshRNAを発現させてPDE1Aのin vivo knockdown実験を進めている。すでに発現抑制は確認でき手法としてのvalidationは得られたことから、HFpEFモデルにAAV9-shRNA-PDE1Aを投与して病態の表現型が改善することを示し、PDE1AがHFpEF進展に重要な役割を担っていることを証明する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験のスケジュールを一部前後させたため、当初予定と差異が生じた。研究計画の内容自体に変更はない。
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