研究実績の概要 |
急性肺血栓塞栓症 (pulmonary embolism; PE)の治療において抗凝固療法を行ってもなお、慢性期に血栓が残存する症例が存在し、予後や生活の質と関係している。現在普及しているCT血管造影による血栓の広がりの定性的評価は急性期の重症度とは相関するが、慢性期の残存血栓の予測には血栓量のみならず、新鮮血栓がどれだけ含まれるかが重要であり、新鮮血栓を正確に同定・定量化できる画像診断の確立が急務である。我々は、非造影T1強調MR血栓イメージング(magnetic resonance direct thrombus imaging; MRDTI)を用いて、冠動脈壁の高信号はメトヘモグロビンを含む6か月以内の新鮮血栓と関連し、血栓年齢推定に有用であることを報告した。本研究の目的は、急性PE 患者においてCT血管造影による総血栓体積とMRDTIによる新鮮血栓体積の定量化法を確立し、D-dimerや心エコーによる推定右室圧との関係を検討する。現時点で、血行動態の安定した急性PE 17例において撮像したCT血管造影やMRDTIを画像解析ワークステーション(ziostation2) を用いて、CT値やMRI信号値をもとに総血栓体積、および新鮮血栓体積を定量化した。17例すべてにおいてCT血管造影にて検出された血栓の一部にMRDTIで高信号を認めたが、コントロールで撮像した慢性肺血栓塞栓症3例においては高信号を認めなかった。17例の平均総血栓体積は14.3mL、平均新鮮血栓体積は6.2mLであった。総血栓体積 (R2=0.319, P<0.05)、及び新鮮血栓体積 (R2=0.368, P<0.01)は急性期推定右室圧と正の相関を示したが、D-dimerとは相関を認めなかった。
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