研究課題
急性心筋梗塞に対するprimary percutaneous coronary intervention(PCI)は予後を改善するが、一部の患者ではno reflow現象による心筋微小循環障害をもたらし心機能および予後を著しく悪化させる。No reflow現象の生じる機序は、毛細血管の内皮細胞の浮腫による内皮障害、心筋・間質浮腫による微小血管の圧迫、多核白血球の集積、フリーラジカル産生などである。以前の血栓溶解療法時代にその抑制治療として再灌流治療後の高圧酸素療法が試みられたが、煩雑性により実用化には至らなかった。それに代わる方法として、過飽和酸素血の梗塞責任冠動脈への直接投与 (過飽和酸素療法)があり、no reflow現象の抑制治療となりうる。本研究の目的は、①ブタ急性心筋梗塞再灌流モデルを用いて、過飽和酸素療法がno reflow現象の原因とされる上記の病態を軽減することにより心筋微小循環障害を抑制することを明らかにし、②前向き臨床研究により、no reflow現象に対する新規治療戦略を確立することである。R5年3月において、①の動物モデルを用いた研究に関しては、コロナ禍による施設間の移動の制約があり、遂行準備段階のままである。②の臨床研究に関しても、症例登録の準備段階のままである。
4: 遅れている
動物実験は、遂行準備段階であるが、勤務する施設と大学が離れており、移動に長時間を要するという時間的制約があり、さらにコロナ禍での施設間の移動の制約があり、動物実験の専門施設の見学も実現できておらず進捗が遅れている。臨床研究は、過飽和酸素療法に使用する治療デバイスの準備が想定以上に煩雑であり、いまだ症例登録の準備段階であり、遅れが生じている。
今後も前向き臨床研究の症例登録を継続して行っていく。また、動物実験に関しては、時間的制約やコロナ禍での施設間の移動の制約解除が目途が立たないので、現状では遂行困難であると考えられる。
今年度、経費のかかる動物実験が行えなかったこと、また動物実験の専門施設の見学も実現できなかったことより、次年度使用額が生じた。次年度は可能な範囲で研究を遂行し、さらに成果発表のため学術集会への参加もする予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Circulation Journal
巻: 86 ページ: 1388と1396
10.1253/circj.CJ-21-1059
Journal of Cardiology
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10.1016/j.jjcc.2022.06.003