研究課題/領域番号 |
22K08153
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 優子 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20345812)
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研究分担者 |
本藏 直樹 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40518081)
佐野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80623842)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 線溶抑制系 / 可視化解析 / トロンビン活性化線溶阻害因子 / トロンボモジュリン / トロンビン活性 / 抗凝固薬 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
本課題では、血栓性疾患に対する抗血栓療法施行時の副作用としての出血性病態、新規トロンボモジュリン異常症で繰り返される異常出血などの病態を想定した。この出血病態を回避するために、生体の線溶抑制系による止血血栓維持能の概念を確立し、その強化が新たな出血回避の方策となる可能性を明らかにすることを目的としている。 線溶抑制系にはα2-アンチプラスミン、プラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)、トロンビン活性化線溶抑制因子(TAFI)がある。このなかでTAFIは、その活性化にトロンビンが関わり、抗凝固薬使用時にはトロンビン活性の減弱にともない、TAFIの活性化が大きく影響をうけることが予想される。活性化TAFIによる線溶抑制作用は、そのcarbpxypeptidaseの特性から、フィブリン上のカルボキシル基端のリジンを切断しプラスミノゲンの結合そ阻害することである。 22年度は凝固活性とTAFI活性化に関して、これまでに確立してきたフィブリンクロット形成溶解可視化解析法を用いて検討を進め論文化するべく取り組んできた。 またTAFIの活性化には血管内皮細胞が発現するトロンボモジュリンに結合したトロンビン活性が大きく影響を与える。一方で内皮上のトロンボモジュリン結合トロンビンは、プロテインCの活性化による抗凝固活性も発現するため、抗線溶・抗凝固のバランスとして理解を進める必要がある。血小板血漿に可溶性トロンボモジュリンを添加し、添加した濃度に依存して凝固・線溶活性が変化しうることを論文報告(Thromb. Haemost 2023)したことを踏まえ、内皮上における凝固線溶活性調節機構の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度は本課題の初年度であり、順調にin vitroの解析が進んでいる。次年度以降、さらにより生体に近い系へ発展させて検討ができるよう、まずは内皮細胞存在下における検討をさらに進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、細胞成分と凝固線溶関連分子との相互作用を時空間的に詳細に検討する。凝固線溶反応の鍵因子となるトロンボモジュリンを発現している血管内皮細胞を用いた凝固線溶活性検出アッセイ系を確立するとともに、その細胞表面におけるトロンボモジュリンによる活性調節機構、血小板を中心としたフィブリン網形成溶解反応との関連性など、これらを本学で稼働する超解像顕微鏡にて高空間解像度で検証することで、新たな機構の解明につなげる。 さらに得られた調節機構が、生体血管で生じうる現象であることの検証に向かうべく、擬似血管デバイスあるいは動物モデルにおける検証などが可能となるよう実験系のセットアップも並行して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は物品費に関わる支出がなく、そのために次年度使用額が生じた。その理由として、これまでの実験手法の継続分で多くが賄えたことが挙げられる。23年度は、さらに特殊なカバーガラスを利用した超解像顕微鏡での解析も予定しており、またさらに凝固線溶関連因子の蛍光標識や新規擬似血管デバイスの使用に伴う物品費への支出が見込まれることになる。
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