研究課題/領域番号 |
22K08155
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木岡 秀隆 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70642099)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 / ストレス応答 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
2022年度は、NEDD化修飾の有無により特異的に変化するタンパク質―タンパク質間相互作用を探索した。 薬理学的NEDD化阻害(MLN4924)および促進(CSN5阻害薬)薬を用いた予備実験を行ったうえで、質量分析法によるタンパク質インタラクトーム解析、更には細胞および組織を用いてNEDD化修飾の有無により変化するタンパク質―タンパク質間相互作用の探索を行った。HSP70ファミリーの分子シャペロンHSC70が、NEDD化修飾を受けたCullin-Rbx型E3ユビキチンリガーゼ(CRL)とNEDD化依存的に特異的に結合することを発見した。CRLはNEDD化修飾によりユビキチンリガーゼ活性が増強することが知られているが、HSC70とCRL間のタンパク質間相互作用は今まで知られていない新規相互作用である。変異体を用いた検討によりHSC70のN末に存在するヌクレオチド結合ドメイン(NBD)がCRLとの相互作用に必要なドメインであることが明らかになった。NBDはADP/ATPの交換に関与し、NBDに結合することが既知である蛋白質群(ヌクレオチド交換因子)はHSC70の三次元構造をアロステリックに変化させ、分子シャペロン複合体の機能制御に関与することが知られており、両者の機能的相互作用についても検討した。まず、CRLがHSC70のATPase活性に与える影響を調べたところ、NEDD化CRLはHSC70のATPase活性を増強させることが明らかになり、また一方で、HSC70はNEDD化CRLのユビキチンリガーゼ活性を増強させることを明らかにした。両者の相互作用は、分子シャペロンとユビキチンリガーゼの機能をストレス負荷に応じて制御するストレス応答機構であると考えられ、今後更に検討を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生化学的検討に加えて、細胞機能評価を並行して行っている。現在のところ生化学的基盤を盤石にすることが、今後の研究進捗に重要であると考えていることから、細胞機能評価実験に関しては当初の予定よりやや遅れているものの、一方で生化学的知見の蓄積は期待以上に進める事が出来ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ストレス刺激によりNEDD化CRLが増加することから、NEDD化CRLとHSC70の結合はストレス応答機構であると考えられる。今後は、生化学的解析としてCRLs側の結合ドメインの検索、および心臓特異的分解基質の同定、機能解析に関しては今回明らかにした新規ストレス応答性タンパク質相互作用の細胞機能的意義をHSC70ノックダウンや、変異体を用いたレスキュー実験により検討する。CRLの既知の活性制御機構として、COP9シグナロソーム(CSN)による脱NEDD化修飾が知られている。HSC70がCRL-CSN経路に与える影響も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は大腸菌精製タンパク質を用いた生化学実験を優先し、使用額が当初の予想よりも少なかった。来年度以降、新規に試薬等を購入する必要のある細胞実験を中心に行う予定としており、残高は来年度に使用する予定である。
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