研究課題/領域番号 |
22K08169
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
赤垣 大樹 久留米大学, 医学部, 助教 (40894598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | IL-22 / IL-22BP / STAT3 / 心筋梗塞 / 心破裂 |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞は死亡頻度の高い疾患群の一つであるが、これは主に心筋梗塞に伴い虚血に陥った心筋細胞がリモデリングを起こし、それに続く心破裂や心ポンプ機能低下に伴う心不全の発症が原因と考えられる。申請者は心筋梗塞による壊死心筋の修復は免疫細胞やサイトカインにより調節されることに着目した。インターロイキン22(IL-22)はSTAT3の活性化サイトカインであり、その作用は内因性阻害因子であるIL-22結合蛋白(IL-22BP)によって調節される。本研究の目的は心筋梗塞病態におけるIL-22、IL-22BPの役割を解明することである。 左冠動脈結紮によるマウス心筋梗塞モデルでは野生型(WT)で心筋梗塞後5-7日で約30%に心破裂を認めたのに対して、IL-22BP遺伝子欠損マウス(IL-22BPKOマウス)では心破裂の発生を認めなかった。また、心筋梗塞前のWT、IL-22BPKO各々の心組織をHE染色で観察したが明らかな差は認めず、心筋梗塞後のHE染色、シリウスレッド染色での組織観察でも両群に明らかな差は認めなかった。ウエスタンブロット分析では、心筋梗塞3日目、心筋梗塞14日目において、IL-22BPKOと比較してWTでSTAT3活性の増強を認めた。IL-22BPKOマウスではIL-22が相対的に増加することでSTAT3活性が増強されると仮説を立てていたが、上記の結果になったことに関しては、IL-22は炎症細胞に作用せず、非炎症細胞のみに作用してSTAT3を活性化するため、WTとIL-22BPKOでは炎症細胞浸潤に差がある可能性があり、その差によって心室全体のSTAT3活性化に影響を与えた可能性が示唆された。今後はさらに両群で炎症に関わる分子の差を比較検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19感染症の影響による臨床業務の拡大や、マウス心筋梗塞手技の確立に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
IL-22BPKOマウスが心破裂を認めない要因としてWT、KOでの血圧差や梗塞範囲の評価、心筋梗塞前後のECM合成代謝の評価、心エコーでの壁厚や心拡大の評価を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が当初予定していた計画より遅延しているために次年度使用が生じている。マウス心筋梗塞もデルの作成や免疫染色の試薬購入、DNAマイクロアレイ解析の委託に使用する予定である。
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