研究課題/領域番号 |
22K08180
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 秀之 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (30467477)
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研究分担者 |
桑原 宏一郎 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30402887)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / TRPCチャネル / ナトリウム利尿ペプチド / CNP / 右心不全 / 肺動脈リモデリング |
研究実績の概要 |
受容体活性化型Ca2+チャネルの一種であるTRPC3、TRPC6の肺高血圧症への関与について、TRPC3/6阻害効果を有するL862 を用いて検討を行った。L862投与により、低酸素やモノクロタリン誘発肺高血圧モデル動物において、肺動脈圧の上昇や右室重量の増加を有意に改善し、肺細動脈の壁肥厚を抑制した。ヒト特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞においてL862が、PDGFによる細胞増殖を用量依存的に抑制した。 また、CNP-GC-B経路のPAH発症進展への病態生理学的意義の検討も行った。Monocrotaline pyrrole(MCTp)投与による肺高血圧モデルマウスの肺にてCNPの遺伝子発現が低下していた。血管内皮特異的CNPノックアウトマウス(CNP ecKO)では、monocrotalin pyrrole投与や低酸素誘刺激による肺高血圧症がより悪化する結果を得た。 また、血管内皮特異的GC-Bノックアウトマウス(GC-B ecKO)では、MCTp投与や低酸素暴露による肺高血圧症の増悪を認めた。またCNP ecKOやGC-B ecKOでは、肺におけるエンドセリン-1、IL6, CCL2やTGF-β1の遺伝子発現が増加し、MCTp投与にて、上記遺伝子発現の増加がさらに亢進した。さらに、ヒト培養肺動脈内皮細胞をPDGFや低酸素にて刺激すると、エンドセリン-1、IL6, CCL2やTGF-β1の遺伝子発現が増加し、CNP投与によりそれらの遺伝子発現の増加は改善した。上記結果は、肺高血圧症の発症進展に、肺動脈内皮由来のCNPが減少することが関与しており、CNP投与が肺高血圧症発症進展を予防する可能性がある事を示す結果と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺高血圧モデル動物が適切に作成され、そのフェノタイプの解析を順調に行うことが出来ている。TRPC3/6の阻害やCNP投与が肺高血圧モデル動物の肺高血圧症を改善する可能性を示す実験結果が得られている。また培養細胞を用いた検討にて、TRPC3/6やCNPの肺高血圧症の発症・進行予防における下流シグナルの解明もすすんでおり、順調に経過していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
肺高血圧症動物モデルとして現在よく使用されているSugen-hypoxiaモデルラットにおいてもTRPC3/6阻害薬やCNP投与が、肺高血圧症発症・進行に対する抑制効果が有るかどうかを検討する。肺高血圧症動物モデルにおいてTRPC3/6やCNPとその受容体であるGC-Bの発現部位の探索も検討しています。以上のように、TRPC3/6経路、CNP - GC-B経路の肺高血圧症発症・進展における意義、その上流・下流シグナルの解析を進める方針です。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスやラットの繁殖状況に合わせてある程度まとまった個体数を実験する必要があり、それらの実験を2024年度に行うように実験を計画しました。それに伴いマウスやラットの飼育のための費用、右心圧測定のためにカテーテル、薬品や試薬、免疫染色の抗体等の費用を2024年度に使用すべく、次年度使用額が発生しました。
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