研究課題/領域番号 |
22K08181
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野里 陽一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50880390)
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研究分担者 |
山本 浩一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00528424)
沢村 達也 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30243033)
高橋 利匡 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (60807270)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化LDL / 脂質異常症 / 高血圧 / 腎不全 / レクチン様酸化LDL受容体 / アンジオテンシンII1型受容体 / Gタンパク共役受容体 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は、脂質代謝異常や高血圧と関連することが多いが、脂質異常症が高血圧や高血圧性腎障害を増強するメカニズムは不明である。本研究では、これらの疾患の相互作用を明らかにし、酸化LDL(oxLDL)とアンギオテンシンII(Ang II)がGタンパク質αqサブユニット(Gq)シグナリングを介して高血圧発症や腎障害に与える役割に焦点を当てた。我々は、oxLDLがoxLDL受容体であるLOX-1(lectin-like oxidized LDL receptor-1)とAng II 受容体であるAngiotensin II type1受容体(AT1)受容体の複合体を介してAng II誘発のGqシグナリングを強化すると仮説を立てた。過年度は主に培養細胞(CHO細胞)やマウスモデルにおいて主に腎構成細胞や腎組織をターゲットに実験を推進した。oxLDL単独ではGqシグナリングを活性化しなかったが、Ang IIと組み合わせると、両受容体(LOX-1およびAT1)を発現する細胞では、Gq介在のIP1の産生とカルシウム流入が有意に増強された。これは、AT1-LOX1複合体におけるoxLDLとAng IIの重要な相乗作用を示唆している。AT1バイオセンサーを用いた構造研究により、oxLDL-Ang IIの組み合わせによる独特な受容体構造変化が示された。in vivo実験では、高脂肪食とAng II投与を受けた野生型マウスは腎障害が悪化したが、LOX-1ノックアウトマウスでは悪化しなかった。これは、CKDにおけるoxLDLとAng IIによる新しい腎障害メカニズムを明らかにし、これらの併存する病態におけるAT1-LOX1受容体複合体をターゲットとした治療の有用性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化LDL(oxLDL)とアンギオテンシンII(Ang II)がGタンパク質αqサブユニット(Gq)シグナリングを介して高血圧発症や腎障害に与える役割のうち、腎障害に関する病態解明については概ね実験結果が集積し、現在論文投稿中である。引き続き、高血圧発症に関する病態解明を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】の通り、AII誘導性の副腎からのアルドステロン分泌や、AII誘導性の腎障害が高脂肪食(酸化LDL)負荷による増強すること、またLOX-1KOで その増強効果が消失あるいは軽減することから生体レベルにおいても酸化LDLとAIIによるAT1Rシグナルの増強が証明された。細胞実験やin vivoでの実験において腎障害モデルでは研究手法や仮設の妥当性が概ね証明されたことから引き続き副腎におけるoxLDLによるAT-1-LOX1受容体複合体を介したアルドステロン合成への影響を詳細に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調にすすんでいるが、論文投稿のための再現性確認に際して、新規に実験試薬(抗体)や組織評価を前倒しで行う必要があり、想定よりも経費を要したため。
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