研究課題/領域番号 |
22K08188
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
永田 さやか 南九州大学, 健康栄養学部, 准教授 (00452920)
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研究分担者 |
北村 和雄 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 特別教授 (50204912)
福田 顕弘 大分大学, 医学部, 助教 (30628889)
和田 啓 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80379304)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビッグアンジオテンシン-25 / レニン・アンジオテンシン系 / アンジオテンシノーゲン |
研究実績の概要 |
レニン・アンジオテンシン系(RA系)は、循環器・腎臓疾患の発症や進展において重要な役割を果たしており、RA系阻害薬は広く臨床の現場で使用されている。しかしながら、組織中のアンジオテンシンII(Ang II)生成機構に関しては未だに不明な点が多い。この疑問の解決のカギとなるペプチドであるビッグアンジオテンシン-25(Bang-25)は組織Ang II 生成機構に関与している可能性が高いと考えられるが、その生成・変換機構はいまだに解明されておらず、また他のRA系因子の存在も否定できない。そこで本研究では、(1)Aogenの血中・組織中での生成産物を明確にする。(2)Bang-25の血中・組織中での変換機構を明確にする。(3)N末端にAogen構造を有するペプチドを検索する。以上の3点について研究を行い、組織中のAng II 生成経路を明確にすることを目的としている。 Ang IIのアミノ酸配列は、ヒト・ラット・マウス・ヒツジなど種間で100%の相同性がある。つまり機能を果たす重要な部分は、種が異なっても同じである可能性が高い。そこでAogenのアミノ酸配列の解析を行ったところヒトとラットではアミノ酸配列の相同性がおよそ54%であった。さらに8-10個のアミノ酸配列が完全一致している箇所がいくつか存在していた。また、Aogenの糖鎖はレニンの結合に重要な事が知られており、ヒトの場合、4つの糖鎖を有している。そのうちの271番目と295番目の糖鎖は他の種でも確認できた一方で137番目の糖鎖はヒトに特異的であった。また、271番目の糖鎖はヒトとラットでアミノ酸配列が完全一致している箇所に結合している事から、機能を持つペプチドが生成される可能性が高いと考えられた。 また現在、ヒトの血清と血漿中に精製したヒトAogenを添加してその分解産物を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aogenの生成産物の予測を立てるためにAogenのアミノ酸配列の解析を行った。その結果、ラットやマウス、ヒツジなどの他の種と比較してアミノ酸配列の相同性は50%前後であった。しかしながら8-10個の連続したアミノ酸配列が完全に一致している箇所がいくつか明らかとなった。さらにレニンの酵素結合に重要と考えられている糖鎖の結合位置とシステインの位置の確認を行った。その結果、18番目と138番目のシステインはヒト以外の種でも存在していた。一方で糖鎖の結合位置は異なっていた。そのうちの271番目と295番目の糖鎖は他の種でも確認できた一方で137番目の糖鎖はヒトに特異的であった。また、271番目の糖鎖はヒトとラットでアミノ酸配列が完全一致している箇所に結合している事から、機能を持つペプチドが生成される可能性が高いと考えられた。次にヒトの血清と血漿中にAogenを加えて37℃でインキュベートして経時的にAogenから生成されるペプチドの検討を行った。現在、Aogenの分解産物の解析を行っている。 以上より研究目的(1)については、Aogenの構造を解析した事から生成されるペプチドの予測を立てる事が出来た。また、本年度も引き続き行っていく予定である。さらに関連する酵素の検索においては、検索をスタートしたところであり、当初の予定通り、来年度も引き続き行う予定である。研究目的(2)については、Bang-25を血中で反応させたところであり、当初の予定通りに進んでいる。研究目的(3)については、次年度以降に実施する予定になっており、本年度は実施しなかった。以上より、本研究は、関連酵素の検索の点では難航しているが、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的(1)については、アミノ酸配列の解析からAogenから生成されるペプチドの生成産物の予想ができた。また、ヒトの血液由来の精製Aogenをヒトの血清と血漿に添加して37℃で経時的に反応させてサンプルを採取した。現在、Aogenからの生成産物の確認と精製を行っているところである。関連する酵素の検索においては、当初の予定通り検索をスタートしたところである。関連酵素については、各種のプロテアーゼ阻害剤を一緒に反応させBang-25や新しいペプチドの生成に関与する酵素を絞り込み、酵素の特定を試みる。そのため、研究目的(1)は、本年度も引き続き行っていく予定である。研究目的(2)については、Bang-25を血中で反応させたところであり、今後、逆相HPLCなどを用いてその分解産物を確認する。その際にAng I やAng II といったすでに同定されているRA系ペプチドについてもその生成量を確認する。分解産物が確認できた場合は、その分画を単離し、構造解析を行う。また、各種のプロテアーゼ阻害剤を一緒に反応させBang-25の分解酵素の特定を試みる。 また、研究目的(3)については、AogenのN末端側を認識するような測定系を用いてBang-25を発見した方法論を用いてAogenのN末を有するペプチドの探索を行う。具体的には、SepPakによる脱塩・除タンパクを行った後にゲル濾過クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーを用いる事でペプチドを精製・分画化していく。
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