研究課題
オメガ3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)から派生する新規炎症収束性脂質メディエーター(Specialized pro-resolving lipid mediators; SPMs)のうち、Resolvin E (RvE) 群にはE1(RvE1)、E2(RvE2)、E3(RvE3)が含まれ、代表者らは 予備実験から新たにRvE3がLPS刺激によるマクロファージの炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNF-α)産生を抑制することを見出した。RvE3はTNF-αの過剰産生が病態に深く関与する急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS )にも効果を発揮することが予想される。そこで本研究では、RvE群の肺胞マクロファージからの炎症性サイトカインやケモカイン産生抑制を介した、マウスARDSモデルの抗炎症効果を解析する。さらに肺胞マクロファージ内のシグナル伝達機構や受容体を解明することで、有効な薬物療法がなく、致死率が高いARDSの新規予防薬、治療薬の創薬研究に挑戦する。まずin vivo実験として、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞にRvE3及び誘導体を100nMずつ各wellに添加した。その後 0.01 μg/ml LPSで刺激し、48時間後に上清中の炎症性サイトカインである形質転換増殖因子β(TGF-β)をELISA法で測定した。RvE3、及び誘導体はLPSによって産生されるTGF-βを有意に抑制することがわかった。
3: やや遅れている
コロナ感染症の影響で、臨床業務、教育業務の荷重が増え、研究時間を十分に確保することが困難であったため、計画がやや遅れている。
in vivo実験として、マウスに麻酔下でLPSを気管内投与しARDSモデルを作成する。化合物はモデル作成前もしくは作成後に投与し、炎症予防効果、炎症収束効果があるか検討する。肺胞洗浄液中の総細胞数、細胞分画を解析する。肺胞洗浄液、肺組織中のサイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1など)、ケモカイン(CXCL1、CXCL2など)産生についてELISA法、リアルタイムPCR法を用いて測定する。肺組織をホモジナイズし、好中球の活性をみる一般的な指標であるミエロペルオキシゲナーゼ(MPO)活性についても測定する。肺胞構造評価を組織学的に検討する予定である。
コロナ感染症のため、臨床業務、教育業務の時間が増え、研究時間を十分に確保することが困難であったため、研究計画に遅れが生じてしまった。in vitro実験を先行して進めたため、次年度はin vivo実験を中心に進め、マウスARDSモデルから得られた結果から、さらにin vitro実験を進めていきたい。
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The Journal of Organic Chemistry
巻: 87(15) ページ: 10501-10508
10.1021/acs.joc.2c01110.