研究課題/領域番号 |
22K08233
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田辺 直也 京都大学, 医学研究科, 助教 (30805817)
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研究分担者 |
佐藤 篤靖 京都大学, 医学研究科, 講師 (30706677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | COPD / 肺気腫 / 好酸球 |
研究実績の概要 |
前年度に続き既存の肺組織バンクより、凍結切片の切り出しを行い、各種炎症細胞の肺胞、末梢気道への浸潤を定量した。非喫煙コントロールに比べて、喫煙肺の末梢気道ではMBP陽性細胞の増加を認めることを確認した。好中球数やリンパ球数には大きな差異を認めなかった。病理が気的に肺気腫サブタイプを評価し、結果、小葉中心性肺気腫(CLE)や傍隔壁性肺気腫(PSE)を非COPDにおいても検出でき、pre-COPDの解析につなげることができた。COPD、pre-COPD症例のどちらにおいても、末梢気道のMBP陽性の好酸球浸潤が、末梢血好酸球と関連することから、臨床においては末梢血好酸球数により末梢気道好酸球炎症、肺気腫形成への疾患活動性を推定できる可能性を示し、論文として報告した(ERJ Open Res 2023;9(5):00235-2023). また、pre-COPDに代表されるCOPD早期病変の解析のため、肺ドック受診者のCT画像解析を行い、気道と肺のサイズミスマッチ(dysanapsis)とCLEが独立して40歳代の喫煙者の呼吸器の低下と関連することを明らかにし論文として報告した(ERJ Open Res. 2024;10(2):00695-2023). 解析マウス慢性喫煙曝露モデルについても検討を行った。T細胞シグナル伝達分子ZAP70の機能低下型点突然変異を有するSKGマウスでは、6か月間の喫煙暴露後、wild typeに比べて強い気腔の拡大と静肺コンプライアンスの上昇を認めることが明らかとなった。肺気腫形成の特徴である気腔の拡大は、気腔面積のフラクタル次元を用いて解析した。本結果を第64回日本呼吸器学会学術講演会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト肺組織の解析について、COPD早期病態と考えられる肺気腫を有する非COPD症例とCOPD症例の炎症細胞浸潤に関する検討を進めることができた。さらにSKGマウスを用いた新規の肺気腫モデルを確立した。次年度は、これらのモデルを用いて、病態のさらなる検討に入ることができるため計画はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肺組織を用いた解析については、肺気腫サブタイプ別の特徴抽出を試みる。前年度に確立したマウス肺気腫モデルの詳細な病理解析(特に肺気腫の構造的特徴抽出)と遺伝子発現解析から、肺気腫形成機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は既存データの解析に多くの時間を費やし、結果を生み出すことが出来た一方で、マウス肺やヒト肺を用いた病態解析、バイオマーカー研究を次年度にあてることとした。次年度は、マルチプレックスによるバイオマーカー測定や遺伝子発現解析に資金を用いる予定である。
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