研究実績の概要 |
難治性の進行性線維化性肺疾患である特発性肺線維症(IPF)は、肺胞構造の消失と、細気管支化を伴う構造改変を特徴とする。近年の研究により末梢気道病変の重要性が明らかにされつつあり、「細気管支化」の分子機構を解明する事は、IPF に対する創薬につながる可能性もあり、極めて重要性の高い研究課題である。細気管支化における上皮の異常修復には、内皮細胞や線維芽細胞によるニッチが重要な役割を持つ事が推測される。近年の単一セルシークエンス(scRNA-seq)により、IPF肺では気管支周囲に存在するCOL15A1陽性内皮細胞(Bro-ECs)が増加する事が報告されている。申請者は移植肺から分離した内皮細胞のバルクRNAseqを用いて、IPFの肺内皮細胞では、Bro-ECsに特異的な転写因子が著名に増加する事を確認した。本研究は、Bro-ECsと細気管支化との関連に焦点をあて、血管性ニッチからみたIPFの病態理解と創薬の基盤構築を目指したものである。 本年度は、Bro-ECsの増加が気管支循環の拡大を意味するのか、また、気管支循環が「細気管支化」に影響を与えるのかを検証する事を目的とした。細気管支化を伴う異常組織改変の動物モデルとして、ブレオマイシンの反復投与モデルを用いた。マウスにブレオマイシンの反復投与(Day0,7,14)を行うと、細気管支化を伴う線維化を認めた。ラットでは、気管支循環がより発達している事から、今後はラットを用いて同様の処置を行い、細気管支化と気管支循環の関連について検討を行う。
|