研究実績の概要 |
本研究の目的は①大規模小細胞肺癌オルガノイドライブラリー樹立(目標100ライン)とomics解析による分子異常把握、②遺伝子改変技術による分子異常の生物学的意義の前向き検証、③新規ヒト小細胞肺癌発癌モデルの作成、の3点であるが、このうち①、②については目標数には達しなかったものの、新規の分子異常を見出し、また、オルガノイドを用いた前向き検証が進んでいる。③については準備中である。
具体的には①小細胞肺癌の4つのsubtypeを網羅した偏りのないオルガノイドライブラリーを30ライン樹立した。樹立したオルガノイドからDNAやRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたomics解析(whole exome sequencing, whole genome sequencing, RNA-seq, ATAC-seq)を行い、新しい融合遺伝子を同定し、また特定のsubtypeである経路が活性化しており、治療の標的となり得ることを見出した。 ②小細胞肺癌は、肺の気道に発生し神経内分泌マーカーを発現することから肺神経内分泌細胞が由来とされてきたが、近年、肺胞細胞からも小細胞肺癌が誘導されることが示唆されていること(Cheung et al., Oncogene 2015)、また、9割以上の小細胞肺癌でTP53及びRB1が不活化している。これらを踏まえて我々は、正常肺気道及び肺胞オルガノイドへの遺伝子改変によりTP53及びRB1を不活化させ、治療標的として見出した経路の活性化への影響を検討した。
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