研究課題/領域番号 |
22K08290
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
浜本 純子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40570239)
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研究分担者 |
安田 浩之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70365261)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
【背景】近年、小細胞肺癌(SCLC)は転写因子発現に基づく4つのサブタイプ(ASCL1、NEUROD1、POU2F3、YAP1タイプ)に分類されることが知られるようになった。一方でこの分類の生物学的意義は未解明な部分が多く、分類に基づく新規治療標的開発は進んでいない。【目的】オルガノイド培養技術を用いてSCLCのサブタイプ分類に基づく統合解析を行い、生物学的な理解を深め、新規治療薬候補の知見を取得する。【方法】2018年7月以降当科で樹立したSCLCオルガノイドを用いてオミクス解析による分子学的特徴並びにniche(生存と増殖に必要な培養因子の最適化)解析、薬剤感受性試験などに基づく生物学的特徴を検討した。【結果】手術、気管支鏡、胸水、喀痰、採血(循環腫瘍細胞)など様々な臨床検体より33人の患者から計40例のSCLCオルガノイドを樹立し(樹立成功率34%)、病理学的特徴が元の臨床検体と同等であることや、SCLCに多く認められるTP53やRB1遺伝子異常の存在を確認した。また、RNA-seq、ATAC-seq及び免疫組織化学染色により樹立したオルガノイドが上述の4つのサブタイプに分類されることを確認した。さらに、niche解析の結果、POU2F3、YAP1タイプでは特徴的な増殖経路に依存していることや、薬剤感受性試験により特定の薬剤が治療薬候補になる可能性を見出した。【結語】患者由来肺癌オルガノイドを用いた分子学的・生物学的統合解析により、SCLCサブタイプ分類に基づいた治療戦略の可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までは、27人の患者から計30例のSCLCオルガノイドを樹立していたが、2023年度もライブラリー拡張を順調に進めており、33人の患者から計40ラインのオルガノイドを樹立することに成功した。 新しく樹立したラインについても、WES, RNA-seq, ATAC-seqを含むomics解析を進めることにより、4つのサブタイプそれぞれのnを増やすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
見出した治療薬候補、その候補と小細胞肺癌で既に臨床で使用されているシスプラチンなどを含む化学療法薬剤との併用効果についてxenograftを用いた実験を行う予定である。 また、得られた知見を英語原著論文として報告する準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
エレクトロポレーションによる遺伝子導入を行った結果、transfection試薬の購入が不要となった。 発生した次年度使用額は、2024年度のマウス購入費に充てる。
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