研究課題/領域番号 |
22K08291
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
原 弘道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70398791)
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研究分担者 |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90468679)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | cGAS-STING / COPD |
研究実績の概要 |
cGMP-AMP synthase (cGAS)-STING系は、細胞老化及び老化随伴分泌現象(SASP)制御機構の一部である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は加齢が関与する難治性呼吸器疾患であり、細胞老化の亢進は細胞増殖能の低下やSASPによるsterile inflammationにより病態進展に関与する。我々はこれまで不十分なマイトファジーによる傷害ミトコンドリアの蓄積や、核膜ラミナ構成タンパクであるLaminB1の発現低下がCOPD病態での細胞老化進展に関与することを報告してきたが、それぞれミトコンドリアDNAの放出やcytosolic chromatin fragment(CCF)形成によりcGAS-STING系を活性化する可能性がある。そこで本研究では、COPD患者肺検体の検討、及びin vitroとin vivoモデルを用いた喫煙刺激による検討から、細胞老化及びSASPをcGAS-STING系が制御し、COPD病態進展に関与する可能性を明らかにする。 本年度は、まず、COPD肺組織におけるcGAS-STING系の活性化の評価を行った。肺癌手術肺検体を用いて、COPD肺組織のcGAS、STINGの免疫染色を行った。 COPD肺組織ではコントロールと比べcGAS、STINGいずれも発現が増加しており、COPDにおけるcGAS-STING系の活性化の可能性が示唆された。COPDと同じ老化関連呼吸器疾患であるIPFではcGAS、STINGいずれの発現も発現の増加はみられたがCOPDに比べると軽度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はヒトCOPDの病態を明らかとするための検討である。そのため、臨床検体において正常肺組織とCOPD肺組織のcGAS-STING発現の違いを確認することが重要である。本年度の免疫組織染色の結果から、COPDにおけるcGAS-STING系の活性化の可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、これまでの検討で、喫煙誘導細胞老化がCOPD病態に重要であることを明らかとしている。今後、手術検体から分離した気道上皮細胞を用いたIn vitroの検討で、喫煙刺激がcGAS-STING系の活性に及ぼす影響、喫煙誘導細胞老化におけるcGAS-STINGの役割を明らかとする。細胞老化は老化関連βガラクトシダーゼ染色、Histone H2AX染色、p16とp21発現で検討する。cGAS-STING系の活性化は、STING、TBK1、IRF3の発現量とリン酸化、さらにNF-κBの活性化で評価する。SASPは、IL-1β、IL-6、IL-8をqPCRとELISA法で評価する。さらに、cGAS-STING系の活性化への、傷害ミトコンドリア蓄積とミトコンドリアDNAの関与を検討するため、PARK2ノックダウン、または過剰発現、さらにPARK2を過剰発現しCCCP刺激によるミトコンドリア除去を行い、CSE刺激を行い、ミトコンドリアDNAの関与を検証する
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次年度使用額が生じた理由 |
残額254円と少額であり、それだけでは物品購入が難しいため。
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