研究課題/領域番号 |
22K08296
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大林 邦衣 産業医科大学, 医学部, 助教 (80456871)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Caspase-4 / 小胞体ストレス / 炎症性細胞死 / 慢性炎症 / 肺線維化 / 上皮間葉転換 / 間葉上皮転換 / 微小環境形成 |
研究実績の概要 |
異常なタンパク合成による強い小胞体ストレスは、肺胞上皮細胞で炎症性細胞死を導き、慢性炎症とともに肺線維化を引き起こす。炎症性細胞死にはCaspase-4が関わり、線維化を増悪する上皮間葉転換を起こすが、上皮間葉転換はCaspaseの古典的なプロテアーゼ活性には依存しないことから、Caspase-4には未知の機能があると考えた。本研究の目的は、非常に強い小胞体ストレスを誘導し、肺線維化を引き起こす新型コロナウイルス感染症を念頭に、小胞体ストレス誘導性Caspase-4の役割解明と、Caspase-4阻害化合物による肺線維化の制御法を確立することである。今年度は①Caspase-4発現を誘導できる細胞株の作製とその活性評価系を確立した。②データベースを用いて、Caspase-4遺伝子発現とともに変動する遺伝子を解析した。③Caspase-4阻害化合物スクリーニングに用いる細胞株を作製した。その成果は以下である。①TAKARA-bio tet-oneシステムを用いてドキシサイクリン依存的にCaspase-4発現を誘導可能な細胞株を作製し、ドキシサイクリン濃度依存的なCaspase-4発現を確認した。さらに上皮間葉転換の誘導を確認したが、細胞死は確認されなかった。②Caspase-4遺伝子と相関を持って変動する遺伝子の中に複数の転写因子が存在することを確認し、Caspase-4の役割を解明する手がかりを得た。③Caspase-4レポーター細胞を作製し、そのレポーター活性を評価し、阻害化合物のスクリーニングに有用であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今の世界状況により実験資材の入手に困難なことがあったことに加え、複数の肺上皮細胞株ではCaspase-4発現が定常状態においても高いため、TAKARA-bio tet-oneシステムによるドキシサイクリン依存的にCaspase-4発現を誘導可能な細胞株を樹立することが困難であった。そこで定常状態においてCaspase-4発現のない293T細胞を用いてCaspase-4の導入を試み、ドキシサイクリン濃度依存的な発現調節を行ったところ、細胞形態の変化や上皮間葉転換の誘導は見られたものの細胞死は確認されず、当初の方針を変更することとなった。しかしながら、データベースを用いたCaspase-4遺伝子と相関を持って変動する遺伝子の解析をもとにCaspase-4発現を制御する転写因子を同定でき、Caspase-4の役割解明の一端となると考える。さらに作製したCaspase-4レポーター細胞を用いて、早々に阻害化合物のスクリーニングに着手できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第1年度において樹立したCaspase-4レポーター細胞を用いて、約6000個に及ぶ阻害化合物のスクリーニングを進め、評価を進める。さらに阻害化合物によるCaspase-4の活性阻害下における上皮間葉転換を検討する。さらに、Caspase-4遺伝子とともに変動する遺伝子における知見をもとにCaspase-4を特異的に制御する転写因子を同定することで、Caspase-4の非古典的な未知の機能解明を当面の目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の世界状況により実験資材の入手に困難なことがあったため、予定より少額となった。次年度は阻害化合物のスクリーニングを行うため、今年度より使用額が増加することが見込まれる。
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