研究課題/領域番号 |
22K08304
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野田 裕美 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (30372436)
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研究分担者 |
亀川 亜希子 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (50867554)
佐々木 成 東京医科歯科大学, 高等研究院, 非常勤講師 (60170677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アクアポリン / ナノディスク / 水チャネル阻害薬 / 水利尿薬 / 脳浮腫治療薬 |
研究実績の概要 |
生命維持のために必須の水輸送を担っているのがアクアポリン水チャネル (AQP)である。水代謝疾患の強力な治療薬として多くのグループがAQP阻害剤開発を試みてきたが成功には至っていない。一方、我々は膜タンパク質1分子を構造・機能を保った状態でナノディスクに再構成するシステムを確立してきた。膜タンパク質研究の障壁を解決するブレイクスルーとなった技術でありハイスループットスクリーニング にも有効である。本研究では純粋水利尿薬となるAQP2阻害薬と脳浮腫特異的治療薬となるAQP4阻害薬の開発を行っている。 我々が発見したAQP2は腎臓集合管に発現し尿濃縮の最終調節を行っている。現在心不全や腹水などの水利尿不全に対しては、AQP2の上流に位置するバソプレシンのV2受容体拮抗薬が使用されている。しかしその有効性は短期的な症状および低Na血症の改善にとどまっており、ハードアウトカムで示される予後の改善効果は認められていない。この原因としてAQP2以外のシグナルへの影響が指摘されている。最終効果器であるAQP2の直接阻害薬は副作用が少なく強力な純粋水利尿薬になることが期待される。 AQP4は脳血液関門での水輸送に関与し、AQP4欠損マウスでは脳梗塞後の脳浮腫が著明に抑制されるため、AQP4阻害薬は脳浮腫治療薬になることが期待されている。現在脳浮腫には高浸透圧利尿薬が使用されているが、電解質異常や高血糖のリスクがある。また無尿の透析症例では投与は透析中に限定され、脳浮腫に対する持続的な治療が困難であるという大きな問題がある。AQP4阻害薬は、全身の体液に影響を与えずに、また透析症例にも有効な脳浮腫治療薬になることが期待される。 本研究ではAQPナノディスクの表面プラズモン共鳴と培養細胞による阻害薬スクリーニング等を行い、他のシグナルに影響がなく、効果が強力で副作用が少ない薬剤の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点までにAQP2ナノディスク作成に成功した。AQP2タンパク質をSf9細胞で発現後IMACおよびゲル濾過精製し、4量体の形でナノディスク再構成されていることを電顕で確認した。次に表面プラズモン共鳴で低分子化合物スクリーニングを行うためAQP2ナノディスクのCAPチップへの固定化を行った。現在スクリーニングに適切なポジティブコントロールの選択を行っている。また水透過性阻害効果のスクリーニングを行うためにAQP2を安定的に発現し集合管主細胞と極めて似た形質を有するmpkCCD細胞を使用している。Permeable supportに培養し、apical側にアナライトを加え、basolateral側にスクロースを加え高浸透圧にして、apicalからbasolateralへの通過液量を測定し水透過性を評価する実験系を作成した。さらに水輸送能を評価するための複数の方法について検討を行い、安定して正確に評価できるシステムを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
AQP2ナノディスクの表面プラズモン共鳴のCAPチップへの固定化までは終了しているため、引き続き適切なポジティブコントロールの検討を行い、その後に低分子化合物スクリーニングを進める。また水透過性阻害効果のスクリーニングを行うためにAQP2を安定的に発現するmpkCCD細胞を用いた水透過性を評価する実験系の作成までは終了しているため、引き続き低分子化合物ライブラリーを用いて水透過性阻害効果を有する分子のスクリーニングおよび絞り込みを進める。
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