研究課題
本申請研究は、糸球体内皮細胞におけるナトリウム利尿ペプチド(NP)の糸球体障害に対する機能的意義についてノックアウトマウスを用いて検討するものである。申請者はこれまでにポドサイト特異的ナトリウム利尿ペプチド受容体(GC-A)ノックアウト(KO)マウスに片腎摘、高食塩、アルドステロン負荷を行い、アルブミン尿やポドサイト傷害が増悪することやその際にポドサイトにおけるp38 MAPKの活性化が生じることを見出した。今回内皮特異的GC-A KOマウスを用いて、アルドステロン負荷による糸球体障害おける糸球体内皮NP-GC-Aシグナルの意義を明らかにし、さらに腎臓病進展における内皮細胞-ポドサイトの相互連関に関する病態や機序を解明することを目的とした。まず今年度は全身性GC-A KOマウスと内皮細胞で特異的に発現するTie2遺伝子プロモーター下にCre recombinaseを過剰発現する(Tie2-CreTg) マウスを交配してGC-Afl/fl;Tie2-CreTgマウスを作出した。8週齢で左腎摘出術を行い、10週齢から6%高食塩負荷、浸透圧ミニポンプによるアルドステロン(あるいはvehicle)投与を開始し、毎週体重や血圧、蓄尿の測定を計4週間継続した。今年度時点の評価では、体重や尿量はコントロールマウスに比してGC-Afl/fl; Tie2-Cre+マウスで明らかな差は認めなかった。一方収縮期血圧は、GC-Afl/fl; Tie2-Cre+マウスにおいて明らかな上昇を認めた。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、全身性GC-A KOマウスと内皮細胞で特異的に発現するTie2遺伝子プロモーター下にCre recombinaseを過剰発現する(Tie2-CreTg) マウスを交配してGC-Afl/fl;Tie2-CreTgマウスを作製し、その表現型の解析に着手することができたため。
初年度に作製したGC-Afl/fl;Tie2-CreTgマウスに関して、尿アルブミンの変化、糸球体を含む組織変化、電子顕微鏡での内皮細胞の形態やネフリン、ポドシン発現変化、糸球体内の細胞外基質産生や炎症に関連する遺伝子発現を比較解析し、内皮細胞特異的GC-A欠失による糸球体障害進行における機能的意義をさら検討していく予定である。さらに糖尿病モデルマウスなどを用いて様々な腎疾患モデルでの内皮細胞特異的GC-Aコンディショナルノックアウトマウスの解析をすすめ、糖尿病性腎臓病や腎炎におけるNP-内皮GC-Aシグナルの意義を解明する方針である。
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Nephrology Dialysis Transplantation
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