研究課題
本申請研究は、糸球体内皮細胞におけるナトリウム利尿ペプチド(NP)の糸球体障害に対する機能的意義についてノックアウト(KO)マウスを用いて検討するものである。今年度は、前年度までに全身性GC-A KOマウスと内皮細胞で特異的に発現するTie2遺伝子プロモーター下にCre recombinaseを過剰発現する(Tie2-CreTg) マウスを交配して作成したGC-A fl/fl;Tie2-CreTg/+(内皮細胞特異的GC-A KO)マウスを用いて表現型のさらなる詳細な解析を行った。コントロールとして、GC-A fl/fl;Tie2Cre +/+マウスを使用した。8週齢で左腎摘出術を行い、10週齢から6%高食塩負荷、浸透圧ミニポンプによるアルドステロン(あるいはvehicle)投与を開始し、体重や血圧、蓄尿の測定を計4週間継続した。体重や尿量、飲水量や摂餌量はコントロールマウスに比して内皮特異的GC-A KOマウスで明らかな差は認めなかった。一方収縮期血圧は、内皮特異的GC-A KOマウスにおいて有意な上昇(7-10mmHg程度)を認めた。さらに尿中アルブミンは、内皮特異的GC-A KO群において高食塩・アルドステロン負荷開始1週以降で増加の傾向を認めるものの有意差は認めなかった。心重量は内皮GC-A KO群で有意に上昇しており、心肥大を反映しているものと考えられた。次に糸球体およびwhole kidneyにおける遺伝子解析では、内皮特異的GC-A KO群でGC-A遺伝子発現が有意に低下していたが、CCl2やTgfβ1など炎症や線維化にかかわる遺伝子発現に有意な亢進は認めなかった。さらに組織学的解析では、高食塩・アルドステロン負荷により糸球体の腫大を認めたものの、コントロール群と内皮特異的GC-A KO群でメサンギウム領域面積に明らかな差は認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、これまでの研究成果で全身性GC-A KOマウスと内皮細胞で特異的に発現するTie2遺伝子プロモーター下にCre recombinaseを過剰発現する(Tie2-CreTg) マウスを交配してGC-Afl/fl;Tie2-CreTgマウスを作製し、その表現型を同定することができたため。
初年度に作製したGC-A fl/fl;Tie2-CreTgマウスに関して、内皮細胞特異的GC-A欠失による糸球体障害進行における機能的意義をさら検討していく予定である。さらに糖尿病モデルマウスなどの様々な腎疾患モデルで内皮細胞特異的GC-Aコンディショナルノックアウトマウスの解析をすすめ、糖尿病性腎臓病や腎炎におけるNP-内皮GC-Aシグナルの意義を解明する方針である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
Nephrology Dialysis Transplantation
巻: 38 ページ: 2517~2527
10.1093/ndt/gfad098
Kidney International
巻: 104 ページ: 929~942
10.1016/j.kint.2023.08.010
巻: 104 ページ: 508~525
10.1016/j.kint.2023.06.007
BMC Nephrology
巻: 24 ページ: 201
10.1186/s12882-023-03253-8