研究課題
糖尿病は代表的な生活習慣病のひとつであり、脳・心血管疾患などを引き起こす要因となることから、これまで多様な血糖降下薬が世界中で開発されてきた。しかし、糖尿病に伴い発症する三大合併症 (腎症、網膜症、神経障害) に関する検討は遅れており、有効な治療法や治療薬は存在していない。本研究は、糖尿病性腎症に着目し、新規治療薬の探索およびそれらの作用メカニズムを解明することを目的として開始された。令和5年度は、『SMTPs の抗酸化作用および抗炎症作用のどのようなメカニズムが腎臓に対して機能しているのか』という問に対し、以下の点について明らかにした。1. 糖尿病性腎症に対するSMTPs の作用メカニズムの検討 (in vivo):糖尿病性腎症モデルマウスに著効を示したSMTP-27およびSMTP-44Dを投与したマウスから摘出した腎臓を用いて、炎症に関するタンパク質 (MCP-1、ICAM-1) および酸化ストレスに関する因子 (NOX-1) の変化をELISA法を用いて評価した。その結果、SMTP-27は糖尿病性腎症によって増加するMCP-1およびICAM-1を有意に減少させており、SMTP-44Dはそれらに加えてNOX-1も減少させていることが示唆された。2. 培養細胞におけるSMTPs の作用メカニズムの検討 (in vitro):培養腎尿細管細胞を用い、高血糖状態にすることによる細胞死や炎症、酸化ストレスの評価を行ったが、顕著な変化を示す条件が見つけられなかったため、終末糖化産物 (AGEs) による刺激に切り替えた。AGEs 刺激による細胞死や酸化ストレスの上昇を SMTP-44D が有意に抑制することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、糖尿病性腎症モデルマウスに著効を示したSMTP-27およびSMTP-44Dが、メトホルミンのような血糖降下作用を示さず、糖尿病性腎症に対して著明な効果を示す作用メカニズムとして、抗炎症作用および抗酸化作用を介していることが示唆された。これらの発見は、SMTP-27 および SMTP-44D が糖尿病性腎症に有効性を示すことの有力な追加データとなった。当初の予定として令和 5 年度と令和 6 年度に実施予定であった、in vivo と in vitro でのSMTP-27およびSMTP-44Dの作用メカニズムの解明において、in vivo では一定の評価が実施でき、in vitro ではAGEs刺激による実験系を確立することができたため、令和 6 年度の研究の土台を作るとともに、スムーズに移行可能であることから、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
令和 5 年度までの研究において、糖尿病性腎症モデルマウスに著効を示したSMTP-27およびSMTP-44Dが、メトホルミンのような血糖降下作用を示さず、糖尿病性腎症に対して著明な効果を示す作用メカニズムとして、抗炎症作用および抗酸化作用を介していることが示唆された。今後は、作用メカニズムの検討を更に深めていくべく、in vivoおよびin vitroの観点から検討していく予定である。
予算より11,391円の余剰分が生じたが、これは培養細胞維持関連試薬が予定より少なく済んだため、次年度に繰り越し、消耗品として使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) 備考 (4件)
Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 47 ページ: 434~442
10.1248/bpb.b23-00771
Journal of Pharmacological Sciences
巻: 154 ページ: 148~156
10.1016/j.jphs.2024.01.004
https://www.showa-u.ac.jp/education/pharm/major/ppharmc.html
https://www.showa-u.ac.jp/research/prc/
https://researchmap.jp/k.shibata
https://www.researchgate.net/profile/Keita_Shibata