研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者の腎・生命予後の正確な予測は、病態解明と治療法開発において重要な指標となる。そこで、「医学文献データと患者ビッグデータを基盤とするCKD病態ネットワークを構築し、実際のCKDの病態を解明すること」を目的として研究に着手した。 2022年度までの成果:CKD患者の予後と合併症発症を予測する3つのAIモデルを発表した。まず、高カリウム血症エピソード後の死亡、透析および心血管イベントを予測するXGB modelを開発した(Nutrients, 2022)。次に、2型糖尿病患者における糖尿病性腎症または心不全の発症を予測するXGB modelを作成した (Kanda E. Sci Rep, 2022)。さらに、アウトカム(末期腎不全または死亡)の発生を高精度で予測するrandom forest modelを開発し、WEBシステムとして公開した(Kanda E. PLOS Digit Health, 2022)。 2023年度の成果:自然言語処理 (NLP) AIによるCKD患者の予後予測モデルの理論的基盤とNLP AIモデルを開発した(Kanda E. Sci Rep. 14:1661, 2024)。まず、CKDに関する大量の医学文献をNLP AIにより解析し、得られた医学用語ベクトルにより構成された医学用語バーチャル空間を構築した。次に、このバーチャル空間へ、CKD患者のリアルワールドデータを変換・移動することに成功した。また、最新数学の圏論を理論基盤とした数学モデルにより、この患者データの変換において、医学的意義が保存されることを証明した。さらにバーチャル空間内のリーマン多様体的距離が、CKD予後と強く相関することが分かった。これらの成果によって、NLP AIによって構築された医学用語バーチャル空間は、リアルワールドを反映していることが示された。
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