研究課題/領域番号 |
22K08363
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
市村 浩一郎 順天堂大学, 医学部, 教授 (10343485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糸球体老化 / アミロイドーシス / ポドサイト / FIB-SEM / アレイトモグラフィー / 老化モデル動物 |
研究実績の概要 |
糸球体は老化により様々な構造変化を来し、構造老化がさらに進行すれば慢性腎不全に移行する。糸球体の構造老化を抑制することで、健康寿命の延伸が期待されるが、糸球体老化抑制法の開発に当っては幾つかの障壁がある。その一つが、ヒトやモデル動物における糸球体老化プロセスの理解がそもそも不十分な点である。さらに別の問題として、老化研究に頻用されるマウスは老化に伴い高度な糸球体アミロイドーシスを発症することから、マウスはヒトの糸球体老化プロセスを再現せず、適切な糸球体老化モデル動物の探索が必要である。 ヒトの糸球体老化を再現するモデル動物を探索した。マウスの代表的な系統(C57BL等)は全て加齢に伴い糸球体アミロイドーシスを呈し、高度なメサンギウム拡大を示すのに対し、ラット(Wistar, SD)は2年齢においても糸球体アミロイドーシスを呈することはなかった。2年齢ラットでは、ヒトの老化糸球体でみられる変化(分節状の効果病変、糸球体基底膜の肥厚、微小癒着病変など)が確認され、ラットがヒトの糸球体老化を再現することが確認できた。そこで、ラットにおいて、糸球体の各コンポーネントの老化形態をFIB-SEMによる連続断面観察と3D再構築により検討したところ、ポドサイトにおいて、老化に伴う独特な変化(未公表データ)が生じていることが判明し、この変化の程度を評価することが糸球体の老化度を判定するうえで有用であることが分かってきた。 研究手法の面では、FIB-SEM法に加え、アレイトモグラフィー(糸球体を丸ごと連続切片化して画像化する手法)による解析基盤が確立でき、今後は糸球体全体(血管極や尿細管極も含めた)の構造老化を解析できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの糸球体老化モデルとしてラットが適切であることが早期に判明したため、糸球体の老化構造自体の解析に速やかに進むことができ、ポドサイトにおけるユニークな老化構造を発見できた。また、アレイトモグラフィーによる効率のよい解析基盤が確立できたが、これは代表者らの研究室において新型のダイヤモンドナイフデバイスを実用化できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの糸球体老化を明らかにするための基盤として、本年度において若年者の糸球体構造をFIB-SEMによる連続断面観察と3D再構築により解析したところ、ヒトにおける糸球体とポドサイトの構造が実験動物とかなり異なることが見えてきており、今後の老化構造の解析においては、老化モデル動物との種差を念頭におく必要があることが分かってきた。 R5年度以降は、主にヒト糸球体の老化構造を明らかにし、カタログ化することを目指す。なお、FIB-SEM法に加え、アレイトモグラフィー(糸球体を丸ごと連続切片化して画像化する手法)により糸球体の全体にわたって構造老化を評価してゆく。特に、血管極や尿細管極のような従来の手法では観察が困難な部位についても解析を行ってゆく。予備的な検討により、糸球体全体の構造評価には組織透明化法の活用も有用であることが分かり、この活用も進めてゆく。 また、R4年度に明らかになったポドサイトにおける老化構造について、論文化を進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
極めて効率的に解析が進んだため、物品費に余裕が生じた。この分はR5年度に行う解析の費用とすることにした。
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