研究課題/領域番号 |
22K08372
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 祐介 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (50611498)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セラミド / 結合型セラミド / 皮膚バリア / 質量分析 |
研究実績の概要 |
前年度に野生型マウスの表皮を用いた解析においてシステイン結合型エステル化ω水酸化セラミドと予想される分子イオンが検出されたが,この分子イオンは結合型セラミドを産生できないマウスであるCyp4f39ノックアウトマウスの表皮では消失していた。このことから,検出された分子イオンがシステイン結合型エステル化ω水酸化セラミドであることが証明された。 NMR解析により,エポキシエノンセラミドの構造を模した合成アナログがエノン部分のβ炭素を介してシステインのSH基とチオエステル結合することで結合体が形成されることを明らかにした。 合成アナログと求核性側鎖をもつアミノ酸(システイン,セリン,ヒスチジン,アルギニン,リシン)との結合アッセイを行なったところ,システイン以外のアミノ酸はいずれも合成アナログと結合しないことが明らかとなった。 角質層は顆粒層との境界面は中性であり,外側へ向かうにつれ酸性になることから,システインとエポキシエノンセラミドとの結合のpH依存性を調べたところ,結合体形成はpH6またはpH7.4では同程度であり,pH4およびpH5では低下することを見出した。このことから,結合型セラミド産生は角質層と顆粒層との境界面で行われることが示唆された。 システインとの結合に重要な官能基を明らかにするため,構造類似体(エポキシエノール,化学合成;ジヒドロキシエノン,エポキシドヒドロラーゼを用いて作製;エノン化合物,市販品)とシステインとの結合性を調べた。その結果,エノン構造をもつ化合物のみがシステインと結合することを見出した。このことから,エポキシエノンセラミドとシステインの構造にはエノン構造が必須であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで存在が不明であった結合型セラミドであるシステイン結合型エステル化ω水酸化セラミドが実際にマウス表皮に存在することに加え,その構造決定,反応の特徴,特異性を明らかにすることができ,論文(iScience誌)の発表にまで至ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
従来型の結合型セラミドであるグルタミン酸結合型ω水酸化セラミドは野生型マウスの表皮からは検出されなかったが,今回同定したシステイン結合型エステル化ω水酸化セラミドとは異なるアルカリ感受性の結合型セラミドの存在を示唆するデータが得られていることから,LC-MS/MS解析によりその存在を明らかにし,構造解析を行う。 TGM1 およびSDR9C7の結合型セラミドの産生への寄与度を調べ,結合型セラミドの産生経路を明らかにする。それぞれの遺伝子を単独および二重欠損させたケラチノサイトを作製し,分化誘導後の結合型セラミド量,および中間代謝物量をLC-MS/MS により調べる。 結合型セラミドの標的タンパク質を同定するため,合成アナログを用いた実験を行う。マウス表皮または分化ヒトケラチノサイトより調製した細胞総抽出液と合成アナログを混合し,合成アナログとタンパク質を結合させる。合成アナログと結合したタンパク質のみを精製し,トリプシン処理後,プロテオミクス解析を行う。
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