研究課題/領域番号 |
22K08379
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山中 恵一 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70314135)
|
研究分担者 |
近藤 誠 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (40464169)
波部 幸司 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (50324538)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 尋常性乾癬 / アトピー性皮膚炎 / サイトカイン / 精子形成不全 / 動脈硬化症 / 注意欠如/多動症(ADHD)様症状 |
研究実績の概要 |
皮膚は免疫組織としては最大の臓器の一つであるため尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚の慢性炎症により皮膚局所から産生されるサイトカインが生体の免疫に与える影響は甚大であり内臓臓器に影響を及ぼすと思われるが、適切なモデル動物が少なく炎症皮膚由来の持続性サイトカイン血症がもたらす臓器障害を調べた報告は少ない。我々は自ら作成した自然発症皮膚炎モデルマウスを用いて、皮膚炎発症後に皮膚炎症病巣部から産生されるIL-1, IL-17や他の炎症性サイトカインにより、全身の炎症、特に非アテローム性動脈硬化・脂質代謝異常に加えて、アミロイドーシスを生じるに至る可能性を検討し、これら内臓病変の一部が抗IL-1αβ抗体の投与により回避でき、治療戦略を作成できる可能性を証明しPLoS One (2014), J Dermatol Sci(2017)に報告した。そして乾癬やアトピー性皮膚炎が単に皮膚のみに影響を与えるに止まらず、心・脳血管病変にも深く関与することを証明し“Inflammatory Skin March”という概念を提唱した(Journal of Allergy and Clinical Immunology,2015)。更にはPETによる解析を行い皮膚炎マウスでは脳のFDG(グルコース)取り込みが低下するという報告や(J Invest Dermatol,2018)、持続する皮膚炎症にて内臓脂肪の炎症や骨粗鬆症も生じる可能性を報告した(Int J Mol Sci,2020a,2020b)。本研究では、慢性難治性皮膚疾患に合併する精子形成不全・精子運動能低下、動脈硬化症、注意欠如/多動症(ADHD)様症状の病態を解明する。また関与する炎症性サイトカインの同定、媒介する因子の同定、更には抗サイトカイン抗体や新規の治療薬の有用性についても検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①慢性炎症に伴う精子形成不全の評価と抗体・阻害剤投与にての治療 (山中・馬岡) 精巣及び精巣上体尾部の総精子数と機能評価(生存率、SDF率、受精能力、先体反応)、加えて組織学的検討(HE染色、コンゴーレッド染色、低酸素誘導性因子HIF1α及びHIF2の免疫染色、IgG染色、酸化ストレスROS活性の測定)を予定する。精子の評価として精巣上体尾部より抽出した精子の所見(総精子濃度、精子運動率、奇形率)、生存率(TO/PI染色) TUNEL染色による精子DNA断片化率の測定(蛍光顕微鏡とFACS)、in vitroでの受精能力評価(CTC/ヘキスト染色、蛍光顕微鏡)、先体反応評価を行う。これらは共に結果がある程度完了している。 ②動脈硬化症の病態解明と治療 (山中・近藤) 硬化の認められた腹部大動脈よりRNAを精製し gene chip解析を行った。動脈硬化に密接に関与し硬化を媒介すると考えられる遺伝子が5因子見つかりRT-PCRでもこれらの因子の増加を認めた。血管内皮細胞・血管平滑筋細胞・周囲の線維芽細胞の各培養系に炎症性サイトカインやadipocytokineを添加し、5因子及び動脈硬化に関連するNF-κβ、AP-1 activator protein1, CEBP, CXCL, IL-6等の増加を確認しており、極めて順調に経過している。 ③注意欠如/多動症(ADHD)様症状の解明と治療 (山中・波部・飯田) モデルマウスの行動解析から人のアトピー性皮膚炎と同様にADHDの合併がほぼ全ての個体で認めた。病態解明を先ず行う。IFN-γ、TNF-αやIL-17への抗体投与や、大動脈のgenechipとRT-PCRより新規に同定された5件の蛋白の阻害剤の投与により、血管病変及びADHD症状が回避可能かを検討する。この研究も、関連因子の同定もすみであり、論文化も完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
慢性難治性皮膚疾患に合併する精子形成不全・精子運動能低下、動脈硬化症、注意欠如/多動症(ADHD)様症状の病態の解明と、治療法の研究をこれまで通り進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の結果が出始めたのが、2022年度の後半に入ってからのため、研究費の使用開始が遅れています。動物の飼育費、試薬の購入に使用予定です。
|