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2022 年度 実施状況報告書

翻訳後修飾に着目した肉芽腫性炎症の制御機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08380
研究機関京都大学

研究代表者

神戸 直智  京都大学, 医学研究科, 准教授 (50335254)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード肉芽腫 / 自己炎症 / ブラウ症候群 / 翻訳後修飾 / ユビキチン化 / NOD2
研究実績の概要

感染症のみならず,変性した自己や代謝産物に対しても形成される免疫反応である肉芽腫のメカニズムには不明点が多い。我々は,細胞内パターン認識受容体であるNOD2遺伝子に変異を有することで自己炎症的機序により,皮膚と関節,眼に肉芽腫をきたすブラウ症候群の解析に従事してきた経験から,このブラウ症候群をモデル疾患として捉えた肉芽腫のメカニズム解明に取り組んでいる。リン酸化以外の翻訳後修飾として近年蛋白の精度管理を超えて注目されるユビキチン化に着目した本研究においては,まずブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系を用いて,ここにHA標識をしたユビキチンを同時に遺伝子導入することで,変異NOD2によって誘導されるユビキチン鎖の同定を試みた。この際,NLR分子の活性化にはK63が関わると推定されることから,HA標識をしたWTユビキチン,K63のみを残し他の残基をアルギニンに置換したユビキチン(Ub-K63),コントロールとしてUb-K48など他のLys残基を1つずつ残したものを遺伝子導入系に導入し,抗HA抗体を用いてユビキチン鎖の形成の有無を確認したが,残念ながらNOD2の変異の有無,およびNOD2のリガンドであるMDPの有無によって形成されるユビキチン鎖に変化は見られなかった。さらに,NOD2の下流でシグナル伝達に関わることが同定されているRIPK2を標的蛋白として,RIPK2の関わるユビキチン形成についても検討したが,この際もNOD2変異の有無による差異は確認できていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系を用いて,ここにHA標識をしたユビキチンを同時に遺伝子導入することで,変異NOD2によって誘導されるユビキチン鎖の同定を試みた。NF-κBの転写亢進能自体は,これまでも行ってきた実験系であることから,期待どおりの再現性が確認された。
この際,NLR分子の活性化にはK63が関わると推定されることから,HA標識をしたWTユビキチン,K63のみを残し他の残基をアルギニンに置換したユビキチン(Ub-K63),コントロールとしてUb-K48など他のLys残基を1つずつ残したものを遺伝子導入系に導入し,抗HA抗体を用いてユビキチン鎖の形成の有無を確認した。しかし当初の作業仮説に反して,NOD2の変異の有無,およびNOD2のリガンドであるMDPの有無によって形成されるユビキチン鎖に変化は見られなかった。
このため,NOD2の下流でシグナル伝達に関わることが同定されているRIPK2を標的蛋白として,RIPK2の関わるユビキチン形成についても検討した。しかしながら,この際もNOD2変異の有無による差異は確認できていない。

今後の研究の推進方策

我々はブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系に加えて,これまでの研究からブラウ症候群患者からiPS細胞を樹立し,さらに単球へと分化誘導することに成功している。この患者由来iPS細胞を用いた研究から,IFNγ添加によりNOD2の発現が増強し,この条件下で変異NOD2をもつ細胞(R334W)においてのみNF-κBの転写亢進や炎症生サイトカイン産生を示すことを確認している。このため,このiPS細胞から樹立した細胞を用いてユビキチン形成能を検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

ブラウ症候群から同定されるNOD2変異体の病的意義を評価するために,我々はFLAG標識をしたNOD2をHEK293細胞へと遺伝子導入し,ルシフェラーゼ活性を指標にNF-κBの転写亢進能を評価してきた実験系を用いて,ここにHA標識をしたユビキチンを同時に遺伝子導入することで,変異NOD2によって誘導されるユビキチン鎖の同定を試みた。しかし当初の作業仮説に反して,NOD2の変異の有無,およびNOD2のリガンドであるMDPの有無によって形成されるユビキチン鎖に変化は見られなかった。NOD2の下流でシグナル伝達に関わることが同定されているRIPK2を標的蛋白として,RIPK2の関わるユビキチン形成についても検討した。しかしながら,この際もNOD2変異の有無による差異は確認できていない。
このため,これまでの研究を通じて確立している別の実験系であるブラウ症候群患者から樹立したiPS細胞を単球系細胞へと分化誘導する実験系を用いて,ユビキチン形成能を検討する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Chang Gung University(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Chang Gung University
  • [雑誌論文] Incomplete penetrance of NOD2 C483W mutation underlining Blau syndrome2022

    • 著者名/発表者名
      Chang Shao-Yu、Kambe Naotomo、Fan Wen-Lang、Huang Jing-Long、Lee Wen-I、Wu Chao-Yi
    • 雑誌名

      Pediatric Rheumatology

      巻: 20 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s12969-022-00743-1

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Potential Benefits of TNF Targeting Therapy in Blau Syndrome, a NOD2-Associated Systemic Autoinflammatory Granulomatosis2022

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Tomoko、Kambe Naotomo、Takimoto-Ito Riko、Ueki Yoko、Nakamizo Satoshi、Saito Megumu K.、Takei Syuji、Kanazawa Nobuo
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fimmu.2022.895765

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 診断力を磨こう 診断困難例の診断プロセスに学ぶ 自己炎症を疑う場合2022

    • 著者名/発表者名
      神戸直智
    • 学会等名
      第121回日本皮膚科学会総会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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