研究課題/領域番号 |
22K08381
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齋藤 香織 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任助教(常勤) (80836924)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TRPM4 / 表皮角化細胞 / 増殖 / 温度 / ランゲルハンス細胞 / 動態 / インテグリンα5 |
研究実績の概要 |
皮膚は生体の最外層のバリアであり、表皮角化細胞は皮膚を構成する主要な細胞である。これまでの研究により、温度センサー分子であるTRPM4は表皮角化細胞においてサイトカイン産生を制御していることが分かっていたが、それ以外の表皮角化細胞における機能は明らかになっていなかった。2023年度には、TRPM4を活性化することにより表皮角化細胞の増殖が促進され、皮膚の恒常性維持に関わることが示唆された。また表皮角化細胞の増殖は低温条件下では低下するが、TRPM4を活性化することによって低下した増殖が回復することが明らかになった。 ランゲルハンス細胞は表皮に存在する唯一の免疫細胞である。昨年までに、ヒト抹消血単核細胞から単球を単離して誘導したランゲルハンス細胞は、グラム陰性細菌の細胞壁成分であるリポポリサッカライド(LPS)で刺激することにより、遊走マーカーや抗原提示マーカーが増加し、2次元平板プレート上でのランダム運動が低下すること、およびインテグリンα5の発現量が増加することが明らかになっている。2023度は、より生体内に近い3次元ゲル中で、ケモカインが存在する際の移動(ケモタキシス)の評価を行った。その結果、ランゲルハンス細胞のケモタキシスはLPS添加によって増加することが明らかになった。さらに抗インテグリンα5抗体で処理することにより、2次元平板プレート上で低下したランダム運動が回復すること、3次元ゲル中・ケモカイン存在下において増加したケモタキシスが低下することを見出した。これらのデータにより、インテグリンα5がランゲルハンス細胞の動態に寄与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、温度センサーTRPM4の皮膚免疫応答における機能を明らかにするために、①表皮角化細胞、②ランゲルハンス細胞をターゲットとして解析を行っている。 表皮角化細胞でのTRPM4の機能として、今回新たに、増殖促進作用が明らかになった。この増殖促進効果は、TRPM4の阻害剤によって認められなくなったことから、表皮角化細胞の増殖にTRPM4が関与することが示された。また、低温条件では表皮角化細胞の増殖が低下するが、TRPM4を活性化することにより回復することも明らかになった。 一方、表皮に存在する唯一の免疫細胞であるランゲルハンス細胞においては、LPS処理による動態の変化にインテグリンα5が関わることが明らかになった。 TRPM4の表皮角化細胞における新たな機能が明らかになったこと、およびランゲルハンス細胞の基本的な機能である動態の解析が進んだことにより、皮膚の免疫応答におけるTRPM4の作用の解明が大きく前進した。
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今後の研究の推進方策 |
表皮角化細胞においては、TRPM4が増殖を促進することが新たに明らかになったため、次年度は分化に対する影響を調べる予定である。また、皮膚の免疫機能とバリア機能は相互に影響しあい、密接に関わっていることから、バリア機能におけるTRPM4の機能を解析する予定である。 ランゲルハンス細胞においては、TRPM4の発現や、アゴニスト処理による影響を調べる予定である。 さらに、温度による影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより当初計画より節約ができたため。打ち合わせをオンラインで実施したことにより旅費を節約できたため。
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