研究課題/領域番号 |
22K08390
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
村岡 響子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00927791)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ケロイド / 肥厚性瘢痕 / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
肥厚性瘢痕やケロイドは、創傷治癒の異常によって生じる線維増殖性疾患である。現在までに正確な原因は解明されていないが、遺伝素因、炎症、そして免疫などの創傷治癒過程のいずれかに異常が生じて、過剰な瘢痕形成を引き起こすものと考えられている。 本研究では、はじめて培養ケロイド線維芽細胞(KEL FIB)のトランスクリプトームシーケンスを行い、融合遺伝子の同定に焦点を当てて解析を行った。 我々のトランスクリプトーム解析で複数の融合遺伝子の候補を特定することができた。しかし、これらを9症例のケロイド組織や肥厚性瘢痕の組織において検出することができなかった。よって、ケロイド性疾患における融合遺伝子の存在を証明することは現時点ではできていない。 一方、トランスクリプトームシーケンスにより同時に遺伝子発現解析を進めた。fragments per kilobase per million map readsの値を算出することで各遺伝子の発現量をKEL FIBと正常線維芽細胞で比較した。結果、GPM6Aの発現が正常線維芽細胞に比べてケロイド線維芽細胞で上昇していることを突き止めた。このデータは、肥厚性瘢痕とケロイドの組織を用いたリアルタイムPCRと免疫染色によっても確認された。トランスクリプトームシーケンスで検出されたGPM6Aの過剰発現は、ケロイド性疾患の病態に関与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに融合遺伝子の検出については一定程度検討を終えているため
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今後の研究の推進方策 |
・GPM6Aの機能解析:我々はGPM6Aはケロイドにおいて細胞増殖を誘導しているとの仮説を立てた。これを確認することで、GPM6Aが肥厚性瘢痕やケロイドの新規治療ターゲットとなる可能性を検証できると考える。
・さらなる融合遺伝子の同定の試み;我々は、融合遺伝子がケロイドにも存在し、ケロイドの病態に関与している可能性があるとの仮説を有している。トランスクリプトームシーケンスで同定された融合遺伝子の他の候補のうち、ケロイドや肥厚性瘢痕の組織で検出できるものを引き続き検索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で研究計画に変更があり、旅費などが残存したため。 今後感染拡大状況を注視しながら計画的に使用する。
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