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2022 年度 実施状況報告書

Type2 サイトカイン関連皮膚疾患におけるガレクチン-7の生理機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08402
研究機関浜松医科大学

研究代表者

島内 隆寿  浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90399204)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードガレクチン-7 / アトピー性皮膚炎 / 表皮角化細胞 / type2 サイトカイン
研究実績の概要

1)アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis: AD)動物モデルとして、C57BL/6J(B6)マウス皮膚にカルシポトリオール(MC903)の連日塗布誘発ADモデルを用いてガレクチン-7(Galectin-7: Gal7)の表皮角化細胞における発現動態を解析した。その結果、ADモデルにおけるGal7発現は人と同様、表皮角化細胞間に認められることを確認できた。また、コントロールと比較して、MC903塗布群において、血漿Gal7値と血漿IgE値の上昇も認めた。同様の結果は、NC/Ngaマウス皮膚へのダニ虫体成分を含む軟膏(ビオスタAD)塗布群でも確認できた。
2)次に我々は、CRISPR/Cas9を用いてGal7欠損マウスを作成することに成功した。作成したGal7欠損マウス並びに野生型を用いて、MC903を耳介と背部皮膚にそれぞれ11日間塗布し皮膚炎を誘発したのち、耳介の厚さ、背部皮膚における経皮的水分蒸散量(Transepidermal Water Loss:TEWL)、そして組織学的な表皮の厚さをそれぞれ測定した。Gal7欠損マウスにおいて皮膚炎を誘導すると、耳介の組織学的な肥厚ならびにTEWLが野生型よりも亢進する傾向を認めた。つまり、Gal7が欠損した状態では、ADの病態が悪化する傾向にあることが示唆された。
3)一方、マウスリンパ腫細胞株(EL4)を用いたGal7の腫瘍細胞への生理活性を評価した。Recommbinant mouse Gal7のEL4細胞におけるPMA誘導性IL-4/IL-13産生能(ELISA法)、細胞増殖(CCK8法)、アポトーシス(AnnexinV/7-AADによるフローサイトメトリー法)を評価したが、特に有意な結果は得られなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Gal7欠損マウスを用いたAD誘導において、野生型との表現形の差異を同定することが比較的困難であり、その条件設定に時間を要している。また、マウスEL4細胞株に対するGal7の特異的な生理活性が見出せず、この細胞株とGal7欠損マウスを用いた皮膚リンパ腫モデルの確立が現時点では困難と考えるに至った。また、Gal7欠損マウス、EL4細胞株の実験に時間がかかり、皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T-cell lymphoma: CTCL)患者における血清Gal7値の評価、患者病変部皮膚におけるGal7の発現分布、並びにCTCL細胞株におけるGal7の薬理作用についての検討がまだ実施することができていない。

今後の研究の推進方策

1)Gal7欠損マウスを用いたADにおけるGal7の免疫学的、薬理学的作用の解明:ADモデル誘導後の表皮細胞間浮腫(海綿状態)の程度について、HE染色にて組織学的解析を行う。そして、表皮細胞間橋を蛍光色素で可視化し、共焦点レーザー顕微鏡で撮影後、画像解析ソフトウェア(Leica Application Suite X)で表皮角化細胞間距離を定量的に解析し、表皮細胞間の浮腫を評価する。それぞれGal7欠損マウスと野生型マウスにて検証し比較する。MC903によるADモデルでは、ヒトAD同様にIL-4、IL-5、IL-13、IL17-A、IL-22、IL-31、IFN-γ、TSLPといった各種サイトカインレベルが上昇する。Gal7欠損マウスと野生型マウスに皮膚炎を誘導し、これらサイトカイン及びサイトカイン産生細胞、各種免疫担当細胞について、PCR、フローサイトメトリーを用いて解析する。これらを通し、Gal7欠損が免疫担当細胞に与える影響を検証する。
2)CTCL患者の血清Gal7値と各種病勢マーカーとの関連、病変部皮膚におけるGal7発現程度の評価:当科バイオバンクで保存している血清を用いて、正常人、CTCL患者、AD患者、尋常性乾癬患者における血清Gal7値を測定し、type2サイトカイン関連疾患であるCTCLとAD患者で有意に上昇しているか、さらにこれら2疾患におけるバイオマーカーとの相関性を検討する。ADについては、抗IL-4/IL-13抗体治療によって、血清Gal7値が減少するか、確認したい。
3)CTCL細胞株におけるGal7の生理活性
CTCL細胞株に対するGal7添加における細胞増殖能、アポトーシスの誘導等、生理活性を有するか、検討する。

次年度使用額が生じた理由

当該研究の初年度の計画はまずGal7欠損マウスの作成を目的としたため、このマウスが作成されるまで、実験が進まず、使用する物品費が予定より少なかった。R4年度でGal7欠損マウスが作成されたため、このマウスが安定的に供給されるようになれば、予定していた実験が進み、物品購入が多くなることが予想される。したがって、R5年度に請求した助成金と合わせて、前述した今後の計画を遂行していく方針である。

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公開日: 2023-12-25  

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