研究課題
ラット毛包幹細胞由来心房筋・心室筋細胞の分化誘導として、各種培養条件下で得られた細胞の免疫染色では、心房筋誘導群においてcTnI / MLC2a陽性の心房筋細胞が、心室筋誘導群においてcardiac troponin T (cTnT) / MLC2v陽性の心室筋細胞が認められた。コントロール群の心筋細胞は、抗cTnI抗体ならびに抗cTnT抗体のみ陽性の心筋細胞であった。リアルタイムRT-PCRでは、コントロール群と比較し、心房筋誘導群でMLC2a、心室筋誘導群でMLC2v遺伝子発現量の有意な増加が認められた。透過型電子顕微鏡像では、コントロール群の心筋細胞は明瞭なサルコメア構造が見られなかった。一方で、心房筋・心室筋細胞には規則的なサルコメア構造が見られた。さらに、心室筋細胞ではT管様構造ならびにβ-catenin陽性の介在板が確認された。カルシウムイメージングでは、いずれの条件下の心筋細胞も、自発的な拍動に合わせて細胞内Ca2+濃度が変化した。心房筋・心室筋細胞では、それぞれ特徴的な波形が見られた。心房筋細胞は、脱分極後に速やかに再分極相に移行し、心室筋細胞で観察されるよりも高い頻度で自発的な活動を示した。心室筋細胞は、急速な活動電位のアップストロークと、再分極相へのゆるやかな移行を示した。心房筋・心室筋細胞は、コントロール群の心筋細胞に比し、活動電位の持続時間のばらつき、活動電位の大きさのばらつき、静止膜電位のばらつきが有意に小さく、規則的な活動を示した。現在、前記の動物モデルの移植実験に加えて、人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の誘導を行っている。作成が成功すれば免疫不全動物への移植に移行する予定である。さらに、毛包幹細胞を糖尿病性皮膚潰瘍モデルマウスに移植し、再生を確認する研究も行っており、再生能を確認している。
2: おおむね順調に進展している
ここまでの研究で、毛包幹細胞を用いた再生医療は早期の臨床応用が期待でき、ラットの毛包幹細胞による脊髄損傷の再生や毛包幹細胞から分化した心筋細胞は 心臓再生医療に高い有効性を持つことが示唆された。心臓疾患は世界でも死因の上位に挙げられる。大量に心筋細胞を欠落すると心機能は著しく低下するが、心筋細胞にはほとんど増殖能がなく自己回復は臨めない。そのため、重度の心臓疾患に対しては心臓移植が最も有効的な治療法であると言われている。一方で、深刻なドナー不足であるため、近年ES細胞やiPS細胞などの幹細胞を用いた再生治療に期待が高まっている。 今回、作成に成功したラット毛包幹細胞由来の心筋シートを、今後の研究では心機能低下ラットへ移植し、毛包幹細胞から分化した心筋細胞のラット心臓への生着を確かめる。毛包幹細胞は遺伝子操作などを用いずに単純な方法で分化培養が可能である。さらに、患者本人の皮膚毛包から採取した毛包幹細胞を患部へ移植すれば、移植後の拒絶反応の問題を考慮する必要はなく、ES細胞やiPS細胞などが抱える腫瘍化へのリスクは低いため、高い安全性が期待できる。現在毛包幹細胞を糖尿病性皮膚潰瘍モデルマウスに移植し、再生を確認する研究も行っている。
現在、前記の動物モデルの移植実験、安全性の確認に加えて、人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の誘導を行っている。同時に生細胞の心筋線維を染色して拍動する心筋細胞の撮影とドパミン関連の免疫染色を追加で行っている。人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の作成が成功すれば免疫不全動物への移植に移行する予定である。現在毛包幹細胞を糖尿病性皮膚潰瘍モデルマウスに移植し、再生を確認する研究も行っている。
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PLoS One.
巻: 19 ページ: e0297443
10.1371/journal.pone.0297443.
PLoS One
巻: 18 ページ: e0280304
10.1371/journal.pone.0280304.