研究課題/領域番号 |
22K08418
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
青山 裕美 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90291393)
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研究分担者 |
小出 哲士 広島大学, ナノデバイス研究所, 准教授 (30243596)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 発汗 / 深層学習 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
背景 中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)の重症度の層別化は、治療効果や疾患の予後を予測するために必要である。しかし、EASIなどの標準的な臨床反応の指標では、重症度や予後に対してより深い影響を与える可能性のある皮膚生理機能の変化を捉えることはできない。目的 ADの異なる表現型を区別するために、皮膚表面微細構造/発汗を検討した。またクラスター解析によりデュピルマブの治療効果や治療成績が予測できるかどうかを検討した。方法 健常対照者とADの地形画像で学習させた深層学習ベースの非侵襲的定量評価システム(AAMS)を開発した。額、前腕、体幹、大腿、下腿の部位で健康人(20-60代)、疾患(AD,乾皮症)を対象にしても、サンプルを解析できるように深層学習を増やし測定範囲を拡張しシステムを適正化し改良した。 結果:多主成分分析で、多数の指標から皮溝と皮丘の発汗滴数とスキンラフネスグレードに絞り込んだ。この指標をもとにベースライン時のADから異なる4つのクラスターを同定できた。このクラスター分類はEASIやTARCとは異なっていた。クラスターIIIは皮膚微細構造の破綻と関連し、クラスターIVは強い発汗障害と皮膚微細構造の破綻と関連した。複数ある測定部位のうち前腕が適切な測定部位であった。クラスターはADの長期的予後(罹患期間)と関連した。AAMSによるクラスター解析は、これまで知られていなかった表現型を偏りのない方法で特定した。全患者にデュピルマブ単剤療法を実施した。EASIにおける臨床的解決の程度は、それらの間で有意な差はなかったが、クラスタ4はデュピルマブ中止後の転帰が悪化することと関連していた。最も影響力のある予測因子は発汗障害であった。AAMSにおけるクラスター4の症状の完全な消失は、これらの患者が追加の外用治療を受けた場合にのみ誘発された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人は多様性があり、侵襲的な検査を施行しづらいため、計画を変更した。発汗障害モデルマウスを作成し、発汗障害がアトピー性皮膚炎を悪化させるかどうか検討した。皮膚の保湿に汗が重要な役割を果たしていることから、アレルゲンが侵入する場所での発汗障害は、食物アレルゲン感作を促進すると考えられる。以前の研究では、表皮に塗布されたハプテンは、含水率の高い角質層よりも含水率の低い角質層に浸透しやすいことが示されました。従って、発汗障害は皮膚脱水を引き起こし、皮膚バリア機能を低下させ、アレルゲンの浸透を促進させると考えられる。目的 我々は、ハプテンおよびオバルブミン(OVA)を発汗障害のある部位に経皮投与した場合に感作を引き起こすことができるかどうかを検討した。方法 マウスをOVAまたはハプテン(TNCB)で足底に表皮感作した後、耳でチャレンジした。発汗障害は、足裏のアレルゲンに暴露する前に抗コリン薬を局所経皮的に塗布することで実験的かつ一過性に誘導し、発汗反応はimpression mold法により確認した。OVA特異的IgEはELISAで測定した。OVAに対する感作については、OVAを皮膚曝露する前に、マウスの足蹠を繰り返しテープストリッピングし、実験的に発汗障害を誘発した。サイトカインの発現はqPCRで調べた。結果 足裏のOVAで感作したマウスと発汗障害で感作したマウスでのみ即時型反応が惹起された。発汗障害を伴う皮膚からのOVA吸収の増加が検出された。発汗障害を伴う皮膚からのOVA感作により、OVA特異的IgEの増加に伴う2型免疫応答が生じた。発汗障害を伴う皮膚からのOVA感作マウスの皮膚病変において、2型サイトカインのmRNA発現が顕著に上昇した。結論 食物アレルゲンに対するアレルギー性経皮感作は、アレルゲン曝露時に発汗障害を伴うマウスおよびヒトの皮膚を通して起こる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルで病態に関与する細胞を特定し、人で検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人を対象にしたサイトカインの絞り込みができておらず、次年度に持ち越すことにした。
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