研究課題
本研究は、抗原特異的なT細胞が皮膚へと選択的に遊走するための仕組みが存在するのではないかとの仮説の検証をおこなう。22年度は観察を進める実験系の確立、再現性の確認を行った。抗原特異的な皮膚炎モデル(接触皮膚炎モデル)、炎症のない皮膚へのT細胞の浸潤モデル、タンパク抗原皮下注モデル(遅延型過敏反応モデル)、ペプチド静注モデル(clonal expansionモデル)間での比較をおこなった。ハプテン(低分子化合物)を抗原とする接触皮膚炎モデルにおいては、真皮樹状細胞、および皮膚に浸潤したT細胞が血管、リンパ管、毛包の周囲にクラスターを形成した。一方、ペプチド抗原によるclonal expansionモデルでは、血管周囲へのT細胞、樹状細胞のトラムライン状の配列を認めた。生体イメージングにより、CD8+T細胞がトラムライン状配列を呈する一方、CD4+T細胞はこの傾向が見られないことが明らかとなった。またT細胞、樹状細胞が集積した部位の血管では内腔の狭窄や途絶が生じていることが観察された。タンパク抗原の皮下注射による遅延型反応モデルでは、接触皮膚炎モデルと同様に血管周囲、リンパ管周囲へのクラスター形成を認めた。一方、炎症炎症のない皮膚への抗原非特異的なT細胞浸潤モデル(Homeostatic expansionモデル)では、主に毛包周囲へのT細胞のクラスター形成を認めた。これらの結果は、炎症の有無、抗原の種類、T細胞のサブセットの違いによってT細胞の皮膚への浸潤、抗原の提示機構が異なることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
CD11cYFPマウスなどの一部の遺伝子改変マウスの産出が不良であったものの、現在までのところ、研究はおおよそ順調に進捗している。
本年度の研究で、T細胞サブセットの違いにより血管周囲へのトラムライン形成に違いがあることが明らかになった。この部分にフォーカスを当てるとともに、抗原提示を行う真皮樹状細胞サブセットの同定、血管周囲での抗原提示、トラムライン様配列の形成において重要となるサイトカインの同定を次年度以降にすすめる。
費用のかかるマウス実験、データの解析を次年度分に回したため。
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