研究課題/領域番号 |
22K08431
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
吉野 三也 鳥取大学, 医学部, 准教授 (10362873)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 真皮樹状細胞 / メラニン / 自己抗原輸送 / 皮膚所属リンパ節 |
研究実績の概要 |
皮膚のメラニンが真皮マクロファージに取り込まれメラノファージを形成する過程で、皮膚所属リンパ節への遊走能を持つ真皮樹状細胞が真皮外へのメラニン排出に貢献するかどうかを解析し、除去困難な色素沈着(シミ)治療の基盤とするのが本研究の目的である。この排出を担う有力候補として、樹状細胞の中でも自己抗原の捕捉に優れる古典的樹状細胞1型(cDC1)に着目し現在研究を進めている。 R5年度は、真皮色素細胞増多症モデルであるHGF-Tgマウスと、cDC1が蛍光マークされ、かつジフテリア毒素投与で特異的に同細胞を除去できるXcr1-DTR-venusマウスを交配した二重変異体マウスを作製し、以下について検討を行った。 1)ジフテリア毒素の長期投与条件の確立 2)ジフテリア毒素投与によるcDC1数の変化(免疫蛍光組織染色、フローサイトメトリー) 3)cDC1数の変化に伴う皮膚所属リンパ節内へのメラニン輸送量の変化(組織標本) ジフテリア毒素は一定の蓄積量を超えるとマウスが死ぬため、薬剤減量での長期投与を試み、1ヶ月程度の継続投与系を確立できた。この条件下での皮膚および皮膚所属リンパ節におけるcDC1の除去効率を上記の方法で解析した。皮膚所属リンパ節では、免疫蛍光組織染色でXcr1陽性細胞のほぼ完全な除去が確認でき、フローサイトメトリーでは皮膚からの遊走型と定義できるCD11c+Xcr1+CD8a-(migratory) cDC1がPBS投与群の約半分に減少することが確認できた。一方、皮膚所属リンパ節内メラニンの有意な減少は画像解析上見られなかった。皮膚では免疫蛍光組織染色でcDC1の減少はリンパ節ほど顕著ではなく、今後フローサイトメトリーでの解析を進める。さらにcDC1の除去開始時期や他の候補細胞について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度からの懸案であるHGF-TgマウスとXcr1-DTR-venusマウス交配による二重変異体マウスの作成効率の改善、また薬剤投与条件の確立や、効率的な樹状細胞単離法の検討に当初予定より時間がかかり、マクロファージ解析が遅れているため、やや遅れていると判断した。フローサイトメトリー、遺伝子発現解析に向け、組織細胞単離法や、非特異的なシグナルを軽減するための組織染色手技の改善を現在も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予想していた、cDC1除去によるリンパ節へのメラニン輸送量の有意な減少が確認できなかったため、今後HGF-TgとXcr1-DTR-venus二重変異体マウスにケモカイン受容体Ccr7のノックアウトマウスを交配した三重変異体マウスを作成し、cDC1除去によるリンパ節内のメラニン量の変化を解析する予定である。このマウスを用いることで、リンパ節へのメラニン輸送を担当する細胞をさらに絞り込むことが期待でき(Yoshino et al, Eur J Immunol, 2012)、すでに準備を始めている。また、cDC1にジフテリア毒素が発現し継続的に除去されるXcr1-DTAマウスを新たに入手し、より早い時期からcDC1を消失させた場合のメラニン輸送量変化を解析する予定である。 組織内のメラニン量定量は、得られるマウス数がまだ少ないため、組織切片上での画像解析定量により行なっているが、今後さらにマウスを増産し、メラニン融解法での1臓器内(リンパ節1個など)のメラニン全量を定量できるよう計画を進めたい。 また、メラノファージ化するマクロファージの解析が遅れているため、R6年度はこの点を注力して解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額の最大の理由は、計画の進捗がやや遅れており、当初計画での新規遺伝子改変マウスの導入や細胞の遺伝子発現解析ができていないため。今後の使用計画としてこれらを進める。また論文発表に必要な経費を支出する予定である。
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