研究課題/領域番号 |
22K08434
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
橋田 裕美子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (00767999)
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研究分担者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (50263976)
樋口 智紀 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 講師 (00448771)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウイルス / 皮膚 / 微生物 / 予後 |
研究実績の概要 |
次世代シークエンス技術の急速な進化によりウイルスメタゲノミクスが進み、新規皮膚指向性ウイルスが相次いで発見されている。しかしその一方で、ウイルス知見の充足には後進性が目立ち、その感染状況や疾患との関連性については不明な点が多い現状である。本研究では、健常者および様々な皮膚疾患患者における新規皮膚指向性ウイルス群の感染状況を、遺伝子型にも着目して詳細に解析する。これにより、新規皮膚ウイルスが各種疾患の発生や病態形成に関与するのか、また特定のウイルス遺伝子型による疾患への影響を検討する。 本年度は、昨年度明らかにしたクタウイルスの健常者における感染状況をまとめるとともに、クタウイルスとの関連性が注目されている疾患である皮膚T細胞リンパ腫において感染状況と患者生命予後について検討した。本邦の様々なタイプの皮膚T細胞リンパ腫および原発性皮膚B細胞リンパ腫、有棘細胞癌などの皮膚癌の皮膚病変標本を用いて、クタウイルスの検出率とウイルス量を調査した。クタウイルスDNAは皮膚T細胞リンパ腫の中でも最も発生頻度の高い菌状息肉症において、他の皮膚疾患と比較して有意に検出率が高いことが明らかとなった。また、患者生命予後を検討したところ、クタウイルス陽性の菌状息肉症患者は、クタウイルス陰性の菌状息肉症患者と比較し、疾患特異的生存期間が有意に短縮され、予後不良となることが示された。一方で全生存期間に有意差は認められなかった。これらの結果は、本邦患者の一部においてクタウイルスが菌状息肉症と関連していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規皮膚ウイルスであるクタウイルスについて、健常者での感染状況に加え関連性が注目されている皮膚T細胞リンパ腫における感染状況を本邦で初めて明らかにすることができた。また、ウイルス感染と患者の生命予後との関連を明らかにすることができた。これにより当初の予定どおり、クタウイルスの知見の充足が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
クタウイルスと菌状息肉症との関連が明らかとなったことから、次に健常者と菌状息肉症患者から検出されたウイルスDNA配列の比較を行う。これにより健常者で検出されるクタウイルスDNA配列と患者から得られるウイルスDNA配列に差が存在するのかを検討する。また、海外で同定されたウイルスDNA配列と本邦で得られたウイルスDNA配列が異なるのか、系統差は得られるのかを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿のための費用と研究を進めるための人件費、データ解析費用を中心に支出を必要最低限に抑えて予算を執行したため繰越金が発生した。 次年度は遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費を中心に予算を計上する。また必要に応じ備品購入に充てる。
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