研究実績の概要 |
代表的抗ウイルス免疫分子であるRIG-I(Retinoic acid-inducible gene-1)は、自然免疫機構に則りType1 IFN産生にはたらくが、一方で、様々ながん細胞において、RIG-I自身がその合成リガンドである5’-triphosphate RNA(3pRNA)により、アポトーシスを誘導することがin vitro、in vivo系にて報告されている。それに関連し、RIG-IはTumor suppressorとして潜在的な抗腫瘍分子として近年注目されてきた(Xian-Yang Li, Mol Cell Oncol, 2014), (Guangyi Y, Oncology letter, 2019),(Diana R E, Oncotarget, 2016)。これまで、我々は先行研究にて、3pRNA 刺激によりRIG-IがI型IFN産生非依存性にp53活性化を起こし、多種の上皮細胞、非上皮細胞のがん細胞死を誘導し、同系列の3種類の正常細胞では細胞死発現が優位に乏しいという実験データを得た。そこで、RIG-Iが上皮系、非上皮系のがん細胞において正常細胞と相違する共通的特徴があると仮定して検証を進めたところ、がん細胞において、核内分子Xの細胞質内局在性が存在し、RIG-Iとの結合、さらにp53への移送を介して、Caspase3開裂および細胞死をきたすことを示唆する所見を得た(未発表)。そのため、正常細胞へ障害の少ない新規の抗腫瘍治療の開発に向けた見解を得られる可能性がある。次に、上記の3pRNAによる抗腫瘍作用がINF産生や獲得免疫系を介さない可能性を示すため行った担癌ヌードマウス(A549移植)を用いたin vivo実験においては、CD8中和抗体投与下で3pRNAが腫瘍退縮を示した。 今回、上記の系統と異なる血液系腫瘍細胞(独立円形細胞)における上記の機序を示すため、2022年度に細胞培養系、In vivo系における上記の実験を計画し進めた。
|