研究課題/領域番号 |
22K08455
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
原田 武志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (10618359)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / ADAR1 |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫 (MM) では、その進展と共に1番染色体長腕 (1q) の増幅が起こり、難治性因子として注目されている。本研究では、1q21に位置する二本鎖RNA編集酵素 ADAR1に着目し、1q増幅とADAR1の関係、ADAR1発現上昇によるMMの病態形成に関する研究を進めている。 これまでの研究で、MM患者検体を含むMM細胞では、健常人由来末梢血単核細胞と比較してADAR1が高発現していることと、1q獲得/増幅とADAR1の発現レベルに正の相関関係があることを確認してきた。ADAR1には分子量110 (p110) と150 (p150) の2つのアイソフォームがあり、I型インターフェロン (IFN) はADAR1 p150の発現を上昇させること、MM細胞においてADAR1発現抑制は細胞死が誘導されることを確認できた。IFN刺激下で、ADAR1を発現抑制すると、MM細胞に協調的に細胞傷害が誘導された。ADAR1 p150過剰発現MM細胞は、親株と比較して、その細胞増殖能が相対的に高く、IFNによる細胞死誘導も軽減されており、ADAR1 p150によるMM細胞の免疫からの逃避機構の存在の一端が示唆された。 MM細胞でのADAR1が編集する二本鎖RNAの実態解明を行うために、二本鎖RNAを認識するJ2抗体を用いて、RNAの同定を行った。IFN刺激による二本鎖RNAの変化は乏しかったが、核と細胞質で二本鎖RNAの存在を同定できた。5-aza-deoxycytidine (5-aza-CdR) によるDNAメチル化酵素DNMT1の阻害が、二本鎖RNAの発現を亢進させることを同定しており、ADAR1阻害とDNMT1阻害による新たな治療法の可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目において、ADAR1 p150によるMM細胞の免疫からの逃避機構の一端を明らかにできており、また、次年度の研究への橋渡しとしての細胞内での二本鎖RNAの同定、およびDNMT阻害とADAR1阻害による新たな検討課題も見出しており、研究全体として概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ADAR1発現抑制によるMM細胞死について、特にIFNとの併用による細胞死ではADAR1 p150が重要と考えられる。そこで、次年度においては、CRISPR-Cas9システムを用いたADAR1 p150の発現欠失細胞を用いての検討を進める。 ADAR1 p150と二本鎖RNAの関係を明らかにするために、二本鎖RNAまたはADAR1 p150を、RNA-結合タンパク質免疫沈降法により回収し、RNA-seqで二本鎖RNAの編集を解析する。5-aza-CdRで発現が亢進する二本鎖RNAについても、同様に解析を予定する。 ADAR1 p110のMM細胞での役割を明らかにする目的で、ADAR1 p110の過剰発現と欠失細胞の樹立を試みる。これまでに、ADAR1 p110については、miRNA産生機構に着目して検討を進めている。miRNA産生へのADAR1 p110の関与が明らかとなれば、MM細胞から骨髄微小環境へのmiRNA含有エクソソームを介する作用についても解析を進める予定である。
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