研究実績の概要 |
成体の多くの組織には、骨髄の幹細胞から分化した単球由来マクロファージに加え、卵黄嚢や胎児肝由来マクロファージが存在する事実が明らかとなり、その意義に注目が集まっているが未だ不明の部分が多い。これら異なる由来を持つマウスマクロファージをex vivoで増幅培養し、それらの特性を比較解析している。 本年度も引き続きこの自己増殖型マクロファージの特性の比較解析を行い、胎児肝由来マクロファージ(FL)のLPS反応性は卵黄嚢由来(YS)や骨髄由来(BM)のものより高いことを見出した。これはマウス胎児初代細胞を用いた解析でも類似の報告(Lakhdari, Sci Rep, 2019)があり、改めて胎児期由来マクロファージモデルとしての特性と妥当性を示した。 YSとFLマクロファージはM-CSF非存在下の培養で、BMと比べてアポトーシス誘導が起こりにくく、特にYSは他の2種類と比べてM-CSFやIL-34の自己分泌レベルも低いことを示唆する結果も得た。さらにYSとFLマクロファージはスタウロスポリンなどアポトーシス誘導薬剤を加えても細胞死誘導がされにくいことがわかった。前年度のRNA-seqおよび今年度新たに追加したATAC-seqのデータからも、YSとFLではBMと比較してアポトーシス関連遺伝子転写レベルが低いという結果を得た。つまり、胎児期由来マクロファージは増殖能や生存能が骨髄由来マクロファージよりも高く、M-CSF低依存性やアポトーシス誘導のされにくさがそれに関連していることが示唆された。 また、ヒト腹水マクロファージについては、胎児期由来と推定される分画(HLA-DRhighCCR2low)と骨髄由来分画(HLA-DRlowCCR2high)をソーティング後、RNA-seqによる遺伝子発現の差を解析中である。
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