研究課題/領域番号 |
22K08471
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
堺田 惠美子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (60422218)
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研究分担者 |
三村 尚也 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00422220)
塚本 祥吉 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00814617)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | POEMS症候群 / クロウ・深瀬症候群 / 形質細胞腫瘍類縁疾患 / 微小残存病変 / クローン |
研究実績の概要 |
POEMS症候群の診断には、以下の3つの大項目が必須項目として設定されている。(難病情報センターHPより) 1) 多発ニューロパチー, 2) 血清VEGF上昇 (1000 pg/mL以上), 3) M蛋白(血清又は尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] ) 一方で、典型的なPOEMS症候群の兆候を呈しながらも、診断時に必ずしもVEGF高値を呈さず、免疫固定法にてM蛋白が陽性とならない患者が2割ほど存在し、これらの患者も、POEMS症候群として治療を行うことにより、他のPOEMS症例と同様に奏功し予後が改善することが報告されている。上記の診断基準に合致しない事例は、適切な治療がうけられず不幸な転帰を辿っていることも多い。血清VEGFは多くのPOEMS患者にとって良好なマーカーとなり得る一方で、すべての症例に適応できる絶対的マーカーではないことに留意すべきであり、より適切なマーカーが存在する可能性は排除できない。 本疾患の病態の中核をなすと考えられる骨髄中のPOEMS形質細胞クローンは数が少なく、伴って産生する蛋白量も微量であることから、免疫固定法では検出されない事例があることは想像に易く、これまでの我々の研究成果として解明してきたPOEMSの腫瘍クローン特性を基盤に、より確度の高いPOEMS特異的クローン解析技術を確立することにより、患者予後を劇的に改善しうると考え、研究遂行している。現在までにPOEMS症候群の骨髄形質細胞シングルセル解析を完了し、学術誌に報告を行った。この結果をもとにマルチカラーフローサイトメトリーを用いた解析について検証を行い、新たな解析手法を開発した。この解析方法と、臨床情報を統合し、その有用性を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセル解析が完了し、本症候群の疾患特異的クローンの特性を解明した。 この結果を基に、マルチカラーフローサイトメトリー解析を用いたあらたな解析手法に関する検証は順調に進捗している。さらに、より精度の高いM蛋白検出技術である matrix-assisted laser desorption/ionization-time-of-flight (TOF) mass spectrometry (MS)を用いた解析を行うべく、解析研究機関とも交渉を開始している。POEMS症例の検体集積も順調であり、研究遂行に必要な検体数も順当に収集できている。
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今後の研究の推進方策 |
POEMSにおける主要徴候であるM蛋白が陰性症例の検討を継続し、臨床情報との併合解析を進める。以下の手法による研究を推進する。 1)マルチカラーフローサイトメトリー解析、2)骨髄細胞に加えて末梢血cfDNAを用いたクローン検出法の開発、3)より精度の高いM蛋白検出技術であるmatrix-assisted laser desorption/ionization-time-of-flight (TOF) mass spectrometry (MS)を用いた解析 1)2)については、我々のこれまでの研究成果であるPOEMS疾患特異的クローンの表面形質、網羅的遺伝子解析結果を基に、より多くの検体数にて検証を進め、臨床・予後情報とともに解析を追加する。 これらの新規定性・定量方法を用いた解析成果により、新たな包括的診断方法の提案が可能であるかの検証とともに、疾患モニタリングの可能性を探り、臨床への還元を目指す。3)については、解析研究機関との契約締結にやや遅れが生じており、準備が整い次第、検体解析を開始する。 倫理審査承認は既に取得済であり、特に当該研究内容の変更なく、遂行可能と判断している。
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次年度使用額が生じた理由 |
フローサイトメトリー法を用いた解析において論文化に十分な研究成果が得られたため、当初計画していた検体数よりも少ない検体数で検証を終了した。また、M蛋白検出を目的としたmatrix-assisted laser desorption/ionization-time-of-flight (TOF) mass spectrometry (MS)を用いた解析のための施設間契約手続きに時間を要しており、本解析費用は次年度へ持ち越す必要があるため。
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