研究課題
本年度は、我々が見出した新たなインテグリンβ3変異を有する遺伝性血小板減少症のノックイン(KI)マウスの解析を中心に行った。我々はαIIbβ3変異からの恒常的なOutside-in signalにより、遺伝性巨大血小板減少症が生じることを我々は明らかにしてきた(Akuta K, et al. J Thromb Haemost. 2020 Feb;18(2):497-509)。一方で、我々は本邦の遺伝性血小板減少症家系の解析から新たなβ3変異[β3(D723H)]を見出した。本遺伝子変異ではαIIbβ3の恒常的な活性化は認められず、従来のαIIbβ3関連巨大血小板減少症とは異なるメカニズムが推測されたため、本遺伝子変異を導入したノックイン(KI)マウスを作成した。マウスは正常に生まれ、明らかな出血傾向は認めなった。KIマウスの血小板数は野生型マウスの50%以下に低下しており、また血小板サイズの増加が認められ、ヒトと同様に巨大血小板減少症を示した。更に、血小板膜蛋白の解析において、αIIbβ3の発現量の低下を認めたが、興味深いことにGPVIの発現量の低下も認められた。血小板機能検査においては、定常状態ではαIIbβ3の活性化は認めず、各種アゴニスト刺激による血小板凝集およびαIIbβ3活性化反応の低下が認められた。KIマウス血小板や巨核球のフィブリノゲンへの接着の異常、FAKやRhoA活性化の減弱が認められ、Outside-in signalの異常の存在を認めた。また培養巨核球からのproplatelet形成の低下および形態異常を認めたことから、本変異による巨大血小板減少症の原因として、αIIbβ3からのoutside-inシグナル異常に伴う骨格蛋白再構成の障害により血小板産生に障害が生じることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りに進捗している。
今後も変異KIマウスに関する検討を中心に検討を進める。今年度の研究によりKIマウスにおける血小板減少が血小板産生の障害の主因であると考えられたが、血小板消費あるいは分布の異常の有無などに関して、血小板半減期の測定、骨髄および脾臓における巨核球の分布、形態等に関し詳細な検討を行う。KIマウスに認める血小板機能低下に関して、inside-outシグナルに関連する分子(タリン, CalDAG-GEF1など)とのアゴニスト刺激後の相互作用について検討し、論文発表を行う
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Internatinal Journal of Hematology
巻: 119 ページ: 1-13
10.1007/s12185-023-03672-1.
巻: 118 ページ: 146-150
10.1007/s12185-023-03559-1
巻: 117 ページ: 314-315
10.1007/s12185-023-03542