研究課題/領域番号 |
22K08484
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
篠原 久明 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (10391971)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | B細胞 / シグナル動態 / 免疫応答 / 数理解析 |
研究実績の概要 |
近年の大規模な感染症の流行により、免疫細胞の機能制御を可能にする分子機序の解明が期待されている。足場タンパクであるCARMA1, BCL10およびタンパク分解酵素MALT1からなる『CBMシグナロソーム』はリンパ細胞活性化シグナルの要である。しかしながら、詳細な『CBMシグナロソーム』の制御の機序は未だ明らかではない。当課題では『CBMシグナロソーム』の形成を制御可能なタンパク修飾とその修飾部位を標的とする分子を明らかにしたい。定量解析と生物情報学的融合解析を用いて当課題を遂行することで一分子の抑制 (遺伝子欠損) では理解が及ばなかった生体のシステムによる制御機能が明らかとなる。これにより感染に対する応答、疾患における免疫機能を制御可能にすることが期待される。 ユビキチン化酵素であるTRAF6が構造解析から『CBMシグナロソーム』の形成に関わる分子として知られている。そこで、TRAF6欠損させたB細胞株を用いて抗原受容体シグナルに関わる分子の活性化や会合情報を生化学的実験にて定量的に取得し、これまでに構築した速度論モデルの発展・改良を試行しながらコンピュータ解析を行っている。これによりTRAF6は『CBMシグナロソーム』をユビキチン化修飾しシグナルを正に伝達するばかりでなく、転写を介さないフィードバック機構により間接的に『CBMシグナロソーム』を形成する制御に対し抑制的に関わっていることが明らかとなった。 『CBMシグナロソーム』の形成に対して負の制御が存在することは示唆されたが、この制御に関わる分子とその標的となる修飾部位については鋭意解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『CBMシグナロソーム』は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達におけるリンパ球活性に必要である転写因子NF-κBの活性化に重要なモジュールである。生物物理学的研究により、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6が『CBMシグナロソーム』を協調的に修飾することが示されているが、BCRシグナルによる『CBMシグナロソーム』形成にTRAF6がどのように関与しているかについての詳細は不明であった。本研究では、TRAF6の全エクソンを欠損させたDT40 B細胞を用いて、『CBMシグナロソーム』形成、BCR-NF-κB活性化シグナルを伝達するリン酸化酵素TAK1およびIKKの活性に対するTRAF6の影響を明らかにした。TRAF6欠損細胞では、TAK1活性の減衰とIKK活性の消失、CARMA1のBcl10への結合の持続が確認された。これらの動態を引き起こす分子機構を説明するために、速度論的数理モデル解析を行った。数理モデル解析のシミュレーションの結果、TRAF6によるIKK活性化の制御により、TRAF6消失におけるTAK1およびIKK活性が再現されること、およびTRAF6関連シグナル依存性阻害要素が野生型におけるCARMA1のBcl10への結合を抑制することが検証された。ここまでの結果を論文にて報告した。 TRAF6が、TAK1を介したIKK活性化の正の制御を行うとともに、Bcl10へのCARMA1の結合に対してシグナル依存的な負の制御に間接的に寄与していることを明らかにしたが、負の制御を担う分子とその標的となる修飾部位についてはさらなる解析を必要としている。
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今後の研究の推進方策 |
『CBMシグナロソーム』形成に対して負の制御に関わる分子の報告は多数なされている。しかしながら、Bcl10へのCARMA1の結合に対してシグナル依存的な負の制御に寄与している分子の特定は新たな検索を目的とした課題の設定が必要となると思われる。T細胞では、TRAF6は、MALT1と結合することで『CBMシグナロソーム』と会合するが、この会合が正と負の制御に必要であると報告されている。さらにMALT1のユビキチン化に対し脱ユビキチン化酵素A20が抑制的に機能していることも知られている。そこで現時点では、A20に着目し、これまでの解析法を踏襲し、数理モデルを駆使しながら論理的に『CBMシグナロソーム』形成に対して負の制御を担う分子としての可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
納品価格における10円以下の誤差の調整ができなかったため。
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