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2022 年度 実施状況報告書

ユビキチン化による蛋白質翻訳後修飾を介したAML発症・悪性化機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08492
研究機関東京医科大学

研究代表者

角南 義孝  東京医科大学, 医学部, 講師(特任) (50732864)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード急性骨髄性白血病 / E3ユビキチンリガーゼ / プロテアソーム / 蛋白質分解
研究実績の概要

私の所属研究室は、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia; AML)原因遺伝子として、偽キナーゼ蛋白質をコードするTrib1を同定し、その機序としてMEK1/ERK1経路の活性化と、E3ユビキチンリガーゼCop1を介したC/EBPα分解の2つのメカニズムを報告している。そこでCop1のAML悪性化における役割を明らかにする目的で、Cop1 flox/Cre-ERT2マウスを作成し、このマウスの骨髄細胞にTrib1遺伝子をはじめとする様々なAML遺伝子を導入することで、AML細胞株を樹立した。Trib1を導入した細胞 (FT1CL)に4-OH-tamoxifen (4-OHT)を添加し、Cop1をノックアウト(KO)すると、細胞増殖が著しく抑制され、成熟好中球へ分化したが、Trib1以外のAML遺伝子を導入したAML細胞株においてはこのような表現系は観察されなかった。以上より、Cop1はTrib1依存的にAMLを悪性化していることが示唆された。
C/EBPα p42アイソフォームはCop1の基質として報告されているが、FT1CL細胞において、Cop1をKOすることで、C/EBPα p42の発現が一過性に回復することを示している。さらにFT1CL細胞においてC/EBPαをノックダウンすると、Cop1 KOによる細胞増殖抑制、好中球分化が阻害され、このC/EBPαノックダウンFT1CL細胞にC/EBPα p42アイソフォームを過剰発現させることで、細胞増殖抑制阻害が部分的に解除されることを示した。C/EBPα p42はAMLにおける強力ながん抑制因子として知られており、以上の結果はTrib1/Cop1経路を介したAML悪性化において、C/EBPα p42が極めて重要な役割を担っていることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、Cop1コンディショナルノックアウトマウス由来のTrib1発現AML細胞株を樹立し、Cop1を介したC/EBPα p42の分解がTrib1関連AMLにおいて極めて重要であるという結果を得ることができた。また予定通りCop1 KO前後のFT1CL細胞を用いて、RNA-seqを実施し、Cop1 KOにより好中球分化マーカーの発現が亢進し、細胞増殖や細胞周期に関わるパスウェイに変化が起こることを見出している。
正常造血におけるCop1の役割を明らかにする目的で、Cop1 floxマウスを造血細胞特異的なVav1-Creマウスと交配させたが、このマウスも安定して供給できるようになっており、今後、骨髄細胞を中心に解析を進められると考えている。
以上より、E3ユビキチンリガーゼのAML発症・悪性化における役割の解明に向けて、着実に前進していると考え、本年度の進捗状況としてはおおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

次年度は、複数のヒトAML細胞株を用いて、COP1ノックダウン実験を実施し、ヒトAMLにおけるCOP1の役割の解明を目指す。
正常造血については、Cop1 flox/Vav1-Creマウスの骨髄細胞の解析を行う。すでに予備実験で、Cop1KOマウスの骨髄中で、好中球の割合が増加することを見出しているが、造血幹細胞から各リニエージにおける変化や異常がないかをFACSを用いて調べる予定である。さらにCop1 WTマウス、およびKOマウス骨髄細胞を用いて、シングルセルRNA-seqを行い、Cop1 KOによる骨髄細胞のグローバルな変化を捉えたいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Secreted mutant calreticulins as rogue cytokines in myeloproliferative neoplasms2023

    • 著者名/発表者名
      Pecquet C, Papadopoulos N, Balligand T, Nivarthi H, Hug E, Xu E, Gisslinger H, Gisslinger B, Rumi E, Pietra D, Cavalloni C, Arcaini L, Cazzola M, Komatsu N, Kihara Y, Sunami Y, Edahiro Y, Araki M, Vainchenker W, Kralovics R, Constantinescu SN. et al.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 141 ページ: 917~929

    • DOI

      10.1182/blood.2022016846

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] E3ユビキチンリガーゼCop1の白血病発症と造血における役割2023

    • 著者名/発表者名
      角南義孝、中村卓郎
    • 学会等名
      第27回造血器腫瘍研究会
  • [学会発表] The role of E3 ubiquitin ligase Cop1 in AML development and progression.2022

    • 著者名/発表者名
      Sunami Y, Yoshino S, Nakamura T.
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] AML発症、進展に関わるE3ユビキチンリガーゼCOP1の役割2022

    • 著者名/発表者名
      角南義孝、中村卓郎
    • 学会等名
      第84回日本血液学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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