PHGDHのコンディショナルノックアウトマウスを準備するために、CAG-CreERTマウスと、理研より導入したphgdh flox/floxマウスを交配した。理由は不明であったが、交配が進まなかったため、人工授精を複数回繰り返し行った。その後マウスの自然交配が進展し、十分数のPHGDHコンディショナルノックアウトマウスを用意できた。4週齢のCAG-CreERT phgdh flox/floxマウスにタモキシフェンを投与して、後天的にPHGDHを欠損させた。タモキシフェン投与後の影響を少なくするため、4週間の間隔を空けた後に造血系細胞の解析を行った。解析は主に骨髄と末梢血を用いて行った。PHGDHのノックアウトは、成体内で造血幹細胞分画の有意な減少を示した。特にLin-Sca-1+c-Kit+で規定される造血幹前駆細胞分画(LSK分画)の減少、そしてLSKの中でCD48-CD150+で規定されるSLAM造血幹細胞においても数の減少を認め、造血系未分化細胞の維持に重要な遺伝子である事が分かった。次に造血幹細胞機能を検証する連続移植を行った。一次移植で既に生着率が有意に低下し、移植後早期から後期まで全期間を通じて低下していた。そのため短期造血幹細胞から長期造血幹細胞まで、造血幹細胞全般においてその機能低下を認めた。これらの結果から、PHGDHは造血幹細胞の質・量の制御に重要な酵素であることが示された。
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