研究実績の概要 |
AMP-activated protein kinase (AMPK) は細胞内で最も重要なエネルギーセンサーの一つであり、真核生物細胞内のエネルギー恒常性を維持するための重要な役割を担っている。AMPKは糖尿病治療薬メトホルミンの標的分子として有名であるが、近年では白血病を含むがんの治療標的としても脚光を浴びている。申請者は、慢性骨髄性白血病 (chronic myeloid leukemia; CML) における細胞内代謝に関する研究を進めてきた。AMPKは、キナーゼドメインを含有するαサブユニットと二つの制御性サブユニットであるβ,γサブユニットのヘテロ三量体からなるセリン・スレオニンキナーゼである。AMPKは細胞内代謝における異化反応の最も重要な制御分子の一つである。細胞内ATP濃度の低下、AMP/ATP濃度比の上昇がAMPK活性化の刺激となる。これまでの研究結果からAMPKの活性制御が治療抵抗性のCMLを含めた白血病の治療戦略には重要であることが明らかになってきている。しかし、AMPK活性制御のメカニズムは複雑であり、腫瘍によってはAMPK活性化が腫瘍抑制に働く場合と阻害が腫瘍抑制に働く場合がある。申請者は、AMPK活性を抑制するメカニズムがあまり知られていないことに着目し、AMPK活性を抑制する複合体を質量分析で同定した。その詳細な相互作用について構造生物学的なアプローチを中心に研究を進めている。
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