研究課題/領域番号 |
22K08524
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川上 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90325639)
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研究分担者 |
井上 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (30821665)
住吉 玲美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70859363)
古賀 智裕 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (90537284)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | iMCD-TAFRO / iMCD-NOS / iMCD-IPL / TAFRO / シングルセルRNAシーケンス(scRNAseq) / イムノフェノタイピング / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
臨床的には発症(受診)から24ヶ月の情報が追跡可能であった214例の情報を集積し、治療反応性を疾患活動性(CHAPスコア:CRP、Hb、Alb、P.S.から構成)の推移で評価した:治療開始24ヶ月後のCHAPスコアが50%以上改善、70%以上改善、2点以上改善の3指標で2群間比較すると、3指標の全てで、24ヶ月以内のTCZ(トシリズマブ IL-6阻害薬)の開始が改善に抽出された。 末梢血液細胞のシングルセルRNAシーケンス(scRNAseq)を進め、以下の結果を得た:特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)患者群と健常者群から採取した末梢血単核球細胞(PBMC)についてscRNAseqを実施し、病態に関わる特定の遺伝子の発現変動を明らかにした。そこでは、iMCD-IPL/NOS(TAFRO型ではないiMCD)と比較してiMCD-TAFRO(TAFRO型のiMCD)とTAFRO症候群におけるVEGFA VEGFR2の発現増加やTh17細胞の分化亢進が、これらの疾患の病態悪化に関与していることが示唆された。TH17細胞はIL-17を産生する。IL-17は血管透過性を高めることが知られており、その結果、体液が血管外に漏れ出してTAFRO症候群に特徴的な体液貯留を引き起こす可能性が考えられる。したがって血小板減少、体液貯留、腎機能障害、臓器腫大という病態において、TH17細胞の分化ならびにVEGFシグナリングが重要であり、疾患ではなく病態に応じた治療の重要性を本研究で示すことができた。また、iMCDリンパ節細胞を免疫不全マウスに移入する実験系において、TpH様細胞から産生されるCXCL13が病態形成に必須であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的には発症(受診)から24ヶ月の情報が追跡可能であった214例の情報を集積し、そこには臨床分類(iMCD疑い、iMCD-NOS、iMCD-TAFRO、TAFRO)とリンパ節病理分類(形質細胞型、過剰血管型、混合型)が示されていた。今年度は治療への反応性の観点で解析し、TCZの治療と疾患活動性を切り口に、一定の方向性を示すことが出来た。ウェット研究においては、未治療の特発性多中心性キャッスルマン病患者群のPBMCを用いて世界初のscRNA-seq解析を実施し、研究実績の概要に述べた、臨床像を説明出来る一定の成果を示すことが出来た。また、iMCDリンパ節細胞を免疫不全マウスに移入する実験系において、TpH(様)細胞- CXCL13-B細胞axisが病態形成に必須であることを示した。以上より、まだ不完全ではあるが、臨床分類-リンパ節病理分類-イムノフェノタイピング-プロテオミクスをリンクさせることにより、特発性多中心性キャッスルマン病の病型をシングルセルRNAシーケンス、イムノフェノタイピング、プロテオミクスで分類することが十分に可能であることが示されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床分類とリンパ節病理分類の新しい方向性があり、それへの対応を第一に行なったが、コホートにおいて、まだ不完全ではあるが、それらで適切に分類出来ることが明らかとなった。iMCD-TAFRO、iMCD-NOS、iMCD-IPL、TAFROは希少疾患であるが、新たな臨床分類と病理分類を組み合わせての評価が世界レベルで進行している。そこで、その潮流に則り患者群を分類し、その中での典型的なサブグループから、網羅的な(広範な)解析を実施し、臨床分類と病理分類の背景を形成するエンドタイプ(endotype)の評価を試みており、scRNAseqは非常に有益であることを世界で初めて示した。また、動物モデルの評価も可能であることも示した。一方で、リンパ節病理分類は専門家での再評価が必要であること、また、従来言われてきた(また、私たちもそう考えている)、mTORC、JAK、I型IFNなどのパスウェイとの関連性がまだ不明確であることも明らかとなり、次年度はこの点を強化して、分子基盤クラスタリングに基づいての考察と国際的なコンセンサスの形成を目指す。
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