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2022 年度 実施状況報告書

ベーチェット病におけるIgA結合型腸内細菌を利用した治療反応性および予後予測

研究課題

研究課題/領域番号 22K08532
研究機関聖マリアンナ医科大学

研究代表者

清水 潤  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30509964)

研究分担者 村山 正承  関西医科大学, 医学部, 講師 (60737675)
高田 えりか  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (90398959)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードベーチェット病 / 腸内細菌叢 / IgA-seq
研究実績の概要

ベーチェット病(BD)は口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状を主症状とする慢性再発性の炎症性疾患である。申請者らはBD患者にてTh17細胞が増加すること(Clin Rheumatol. 2016)、腸内分泌型IgAが増加すること(PLoS One. 2016)、腸内細菌叢に変動があること(Clin Rheumatol. 2019)などを見出している。また、熱ショックタンパク質(heat shock protein:HSP)がBDにおける自己抗原や細菌由来外来抗原として病原性を持つ可能性に関しても報告してきた(Autoimmune Dis. 2012)。
本研究では、BDのT細胞に対する病原性物質候補を用いた疾患モデルをin vitroおよびin vivoにて構築する。そのうえで、炎症惹起因子と推測されるIgA結合型腸内細菌とT細胞反応性の関連に着目し、実際のBD患者データとの比較解析を行う。特に疾患活動性の推移や治療反応性を考慮することで、IgA結合型腸内細菌とT細胞反応性のBDにおけるバイオマーカー・予後規定因子としての可能性を追求する。
具体的には初年度に、HSPを用いてマウスにBD病態を構築することを試みる。血清学的解析・メタゲノム解析を実施する。また、免疫・組織学的解析により、BDの4大主徴を評価する。2年目にはBD疾患モデルマウスより経時的に採取した糞便を用いてIgA-Seqによるメタゲノム解析により、IgA結合型腸内細菌叢とIgA非結合性腸内細菌叢の組成およびそれら菌種による遺伝子機能を評価する。1年目に得た所見との相関を見て、腸内細菌の病原性を探索する。最終年度には、BD患者にてIgA-Seqを実施して予後予測に果たす役割や、介入の可能性を検索する。新しいタイプの病態解明と治療方法確立に至ることを目的としている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、HSPをB6、BALB、DBAの3系統のマウスに免疫して、反応性を観察した。表現型として、皮膚粘膜病変、眼病変に加えてBDの特殊型として認められる消化器病変と中枢神経病変に関しても観察を加えた。BDの特殊型に関しては本邦において予後規定因子となることが多い。結果は、眼球内には大きな変化は認められなかった。皮膚粘膜においては少数のマウスにて、HSP接種部位に脱毛や発赤等の炎症所見が見られたが直接障害である可能性がある。消化管には、粘膜下層の肥厚・細胞浸潤や濾胞構造などが見られ、炎症が誘導されている可能性がある。また、中枢神経においても局所的に組織の肥大や、少数ながら免疫担当細胞の浸潤も観察された。いずれも追試験が必要と判断している。
さらに、マクロにて脾腫とリンパ節腫脹を観察していたが、組織観察ではTリンパ球の減少と同部位への単球・マクロファージ系細胞の浸潤を見た。血清においては3系統ともに抗HSP抗体価の上昇を見ており、システミックな免疫が実施されていると判断された。この炎症反応に比較すると、末梢組織への炎症反応の波及は軽度である可能性がある。

今後の研究の推進方策

研究2年目の方策としては、(1)HSPおよびマウスを用いたBD病態再現実験の追試験を実施する。初年度の実験では確実に炎症は惹起されていることが確認されているので、遠隔臓器としての中枢神経と消化管の組織観察に重点を置く。実際のBD患者において特殊型である中枢神経と消化管合併症は、比較的後期発症が多い。したがって実験期間をやや延長することも検討する。また、T細胞の機能分化に関しての検討を開始する。一般的に腸内細菌が病原性を持つ場合には、不安定な分化過程が関与することが多いとされる。HSPの分化過程への盈虚を探索する。
(2)前述のように、今回のBD病態再現実験においては末梢臓器への炎症反応の波及が弱い可能性がある。したがって、生体内にてHSPのT細胞に対する影響の詳細を検討するために、マウスフットパッド免疫モデルを使用することとする。特に上記(1)で述べた分化過程に着目する。

次年度使用額が生じた理由

プロトコールの検証を繰り返すことによって、当初計画より経費の使用が節約することが可能であった。また、新型感染症によって直接の学会参加による情報収集だけではなく、Webを含めた複数の方法を選択できたことも経費節約に資することが可能であった。
基本的に新年度の研究プロトコールはR4年度プロトコールを踏襲するため、当初より積極的に実験を実施する。多数の研究技術員の方を利用することで、効率の上昇を図る。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Chemokines and chemokine receptors as promising targets in rheumatoid arthritis.2023

    • 著者名/発表者名
      Murayama MA, Shimizu J, Miyabe C, Yudo K, Miyabe Y.
    • 雑誌名

      Front Immunol. 2023 Feb 13;14:1100869.

      巻: 14 ページ: 1100869

    • DOI

      10.3389/fimmu.2023.1100869.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Immunopathology of Behcet’s Disease: An Overview of the Metagenomic Approaches.2022

    • 著者名/発表者名
      Shimizu J, Murayama MA, Miyabe Y, Suzuki N.
    • 雑誌名

      Rheumato 2022; 2(3): 74-86.

      巻: 2 ページ: 74-86

    • DOI

      10.3390/rheumato2030010

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Gut Microbe Metabolite Short-Chain Fatty Acids May Associate with Development of Respiratory Involvement in Patients with Relapsing Polychondritis.2022

    • 著者名/発表者名
      Shimizu J, Murayama MA, Miyabe Y, Suzuki N..
    • 学会等名
      ACR/ARHP annual meeting. 2022. (Philadelphia)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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