研究実績の概要 |
代表的な自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)の疾患慢性化、および治療抵抗性の獲得にはエピゲノムの変化が関係する。本研究の目的は、RAの滑膜炎症において中心的役割を果たす炎症性サイトカインTNFによるDNA脱メチル化酵素TET3の発現誘導(TNF-TET3軸)に焦点をあて、ヒトRA患者由来線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)におけるヒストン修飾への関与とこれらに基づくFLSの機能の変質、さらにはFLS特異的TET3欠損マウスと hTNF-tgマウスを用いて、TNF-TET3軸がFLSの包括的なエピゲノム変化に果たす役割を明らかにすることである。 これまで、RA患者由来FLSを使用し、siRNAを用いてTET3をノックダウンし、TNF刺激の有無で、網羅的に発現遺伝子の差を評価した。TNF刺激の有無、TET3ノックダウンの有無による4群間で発現に有意差が示された遺伝子において、クラスター解析を行ったところ、52個の TET3介在性 TNF誘導性遺伝子が抽出され、好中球の遊走に関与する CXCL8, CXCL5などのCXC-ケモカイン、MYOCD, CNN1, ITGB3などのmigrationに関与する遺伝子、LIFやIL1Bなど炎症をさらに増幅させうる遺伝子、KIT, RELBなどのproto-oncogenes、IFI44LやOAS1, RSAD2などのIFN誘導性遺伝子、TNFAIP3やFADS2などのRAリスクSNP 遺伝子の他、NEFM, SCG2, NTRK3などの神経系に関与する遺伝子が見つかった。これらの検討からはRAのFLSにおいて、TNF- TET3 axisはパンヌスの構成に重要な遺伝子群の発現調節を担うことが示唆された。現在ヒストン修飾との関連を検討中である。
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