研究課題
ゲノムワイド関連解析(GWAS)により関節リウマチ(RA)疾患に感受性のある遺伝子群が特定された。我々はin silico解析により、CD20陽性B細胞でスーパーエンハンサー(SE;巨大なエンハンサー集団)による制御を受け、B細胞膜上で高い発現を示し、X染色体にコードされ、リウマチ遺伝学と関連するP2RY10 (P2Y Receptor Family Member 10) 遺伝子を見出した。しかしながら、その発現制御機構、B細胞における機能、そしてRA病態形成における役割は不詳である。令和4年度(初年度)は1)まず末梢血単核球細胞において健常人(n=30)に比してRA患者(n=75)のP2RY10 mRNAの発現は有意に低値であった。2)つぎに小規模解析では健常人(n=6)に比してRA患者(n=6)においてP2RY10タンパク質の発現も低下していた。3) そしてP2RY10 mRNAの発現においてRA患者間に性差は検出されなかった。4)またCD19陽性T細胞のP2RY10遺伝子および近傍のRA感受性SNP領域(rs6619397)において、AA遺伝子型のRA患者はTT遺伝子型に比してスーパーエンハンサー(SE)形成因子Rad21およびSMC3のリクルートがそれぞれ減弱していた。以上より、AA遺伝子型を有することでP2RY10遺伝子の近傍においてSE形成が障害を受け、P2RY10遺伝子の発現が低下するメカニズムが予想された。
2: おおむね順調に進展している
健常人に比して関節リウマチ(RA)患者の末梢血単核球において、P2RY10の発現が低下することを見出した。RA感受性SNP(rs6619397)を有するAA遺伝子型のRA患者由来B細胞はTT遺伝子型に比して、スーパーエンハンサー形成が障害を受けている可能性が示唆された。以上より、P2RY10遺伝子発現制御に関するメカニズムの一端を明らかにした。 従って、進捗状況は概ね順調に推移していると判断した。
健常人とRA患者由来の各B細胞のSE構造を示すP2RY10遺伝子領域において、ChIPアッセイを 使してSE活性を制御するさらなる転写制御因子を見出す。以上より、RA患者のB細胞のP2RY10発現制御におけるクロマチン構造変換機構の関与を明らかし、SE活性を評価することが可能である。ナイーブB細胞からPlasmocyte(抗体産生細胞)分化誘導系にP2RY10のリガンドであるLysophosphatidylserine (LysoPS)を投与して、Plasmocyte分化におけるP2RY10シグナルの役割を検討する。一方、PlasmocyteをLysoPSで刺激してIgMとIgGの各産生を定量することで、LysoPSがPlasmocyteの活性に及ぼす影響を検討する。上記3点を踏まえRA病態形成におけるP2RY10の機能的関与について明確にすることが可能である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)
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