研究課題/領域番号 |
22K08550
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中野 信浩 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30420839)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 食物アレルギー / 粘膜型マスト細胞 / MHC class II |
研究実績の概要 |
腸管粘膜に存在する粘膜型マスト細胞は、IgE依存性食物アレルギーの中心的なエフェクター細胞として知られている。しかしながら、腸管からマスト細胞を分離することが難しく、その詳細な機能については不明な点が非常に多い。 我々はこれまでに、食物アレルギーマウスモデルの解析から腸管マスト細胞の表現型に多様性があることを見出している。本研究では、腸管マスト細胞の表現型に多様性が生じる理由の解明、および異なる形質をもつマスト細胞が食物アレルギーの病態形成においてそれぞれどのように関わっているのかを解明することを目的としている。これらを明らかにすることで、食物アレルギー治療に有効な創薬標的が示されると考えている。 2022年度は、本研究課題遂行のための基盤となる腸管マスト細胞再構成マウスの作製方法を確立し、その腸管マスト細胞再構成マウスを用いて食物アレルギーモデルを作製、抗原提示細胞様の表現型をもつ粘膜型マスト細胞の機能解析を行なった。 食物アレルギーマウスの腸管にはヘルパーT細胞への抗原提示に関わる分子MHC class IIを発現するマスト細胞が存在する。そこで、マスト細胞欠損マウスにMHC class II欠損マウス由来のマスト細胞を移入してマスト細胞のみMHC class IIを欠くマウスを作製し、食物アレルギーを発症させたときの病態を野生型マスト細胞移入マウスと比較した。その結果、MHC class II欠損マスト細胞をもつマウスでは食物アレルギー症状が有意に減弱したことから、抗原提示細胞様の表現型をもつマスト細胞は食物アレルギーの増悪に寄与していることが示された。また、MHC class II欠損マスト細胞をもつマウスでは食物アレルギー発症時に出現する腸管マスト細胞数が野生型マスト細胞移入マウスとくらべ有意に少なかったことから、現在その詳細なメカニズムを解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究において、本研究課題を遂行するための基盤となる腸管マスト細胞再構成マウスの効率的な作製方法を確立した。本法により安定した実験結果を得ることができるようになり、MHC class II分子を発現する腸管粘膜型マスト細胞は食物アレルギーの病態の増悪に関与していることを明らかにした。現在病態を悪化させる詳細なメカニズムを解析中である。 また、腸管マスト細胞の表現型に多様性が生じる理由の解明において用いる培養環境下で粘膜型マスト細胞を作製する技術は確立済みであるが、ここにIL-33やIL-4を加えることで食物アレルギー発症時に現れる増殖性の粘膜型マスト細胞を誘導できることも見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
抗原提示細胞様の表現型をもつ粘膜型マスト細胞が食物アレルギーの病態形成において果たしている役割を解明する研究では、2022年度に引き続き詳細なメカニズムを解析していく。具体的には、培養条件下で骨髄細胞から作製した粘膜型マスト細胞は抗原提示によりヘルパーT細胞を活性化できたことから、腸管においても、粘膜型マスト細胞の抗原提示によりヘルパーT細胞が活性化されマスト細胞増殖因子を産生し食物アレルギーの病態を悪化させる、との仮説をたて、その立証を試みる。2023年度中にこれらの結果を論文にまとめ投稿することを予定している。 腸管マスト細胞の表現型に多様性が生じる理由を解明する研究では、2022年度の研究で明らかとなった環境中のサイトカインの違いによる影響、もしくは当初予想していた由来する細胞系列が異なっている、という2つの仮説を立て、それらの立証を試みていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに使用したが、動物実験施設の改修工事のため当初予定していたよりもマウスの飼育数を減らさなければならなくなったため、飼育費用が圧縮された。また、研究成果発表を行なった日本研究皮膚科学会がオンラインでの参加となったため、旅費・宿泊費の支出が不要となり、187,068円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、2023年度分として請求する助成金と合わせ、研究に必要な試薬・機器類・実験動物の購入と飼育、及び学会での発表や論文投稿などの研究成果発表のための経費として使用する。
|